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意地っ張りにつける薬

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「……カナダだよ」

 君にこんなセリフ言う日が来るとは思わなかった。
だって言う必要がないんだもの。皆は君と僕を間違える。だからいつも僕は自分の名前を言って主張するんだ。僕はアメリカじゃないカナダだよってね。だから君に言う必要はないんだ。だって君は僕を君だと間違えないだろ?君自身なんだから。
だけど君は間違えたね。僕を見間違えた。

 アメリカが風邪を引いた。
空元気が特徴と言ってもいい彼が体調を崩し寝込む事は珍しい事だった。彼に何かある場合日本が世話を焼きに来るのだが、アメリカが風邪となると日本も風邪をひいて動けなくなってしまう。まさに悪循環だった。隣に住むカナダは見かねて彼の家まで様子を見に行った。
自分にまでうつされたらかなわないからなどと誰が聞いているわけではないのにぶつぶつと言っていたが、なんだかんだ言って心配なのだ。
 アメリカの家につくと彼は寝込んでいた。弱っている彼は珍しく、その姿は無駄に大柄な彼を小さく見せた。一人ベッドに横たわり熱にうなされている彼を見ると、カナダは昔に思いをはせた。
今より新大陸が何もなかった時期。カナダも彼もよく病気に見舞われた。広大な土地の中で誰にも頼れず病魔と闘う事は辛く苦しく、寂しかった。そんな時さしのべられたのはいつもあの、大きな手だった。

「アメリカ……?平気かい? 何か食べる?」
「ん……」
カナダが話しかけると寝ていたアメリカは目を開き、こちらを見た。熱のせいか焦点が定まらない。まだ眠りから醒めきっていないのかもしれない。
そのせいなのかはわからない。アメリカは随分舌足らずな声ではっきりとこう言った。

「イギリス……?」


 僕とあの人、そんなに似ているかな?どちらかというと君の方が似ていると思うけど。僕の髪はフランスさん譲りだし。言葉は君より似てるかもしれないけどね。
でもやっぱり、君も不安なんだね。よくわかるよ。不安な時はいつもあの人が居てくれた。だからわかるよ。いつも自信たっぷりで、皆をひっぱるリーダーとして前に出てる君だけど。
病気の時くらい、不安になるよね。寂しくなったりするよね。
だからこれは僕だけの秘密にしてあげる。
きっとこんな事を言ったら君は怒るだろうから。ていうか、ケンカになりかねないよね……。


「何だいこれ」
「薬だよ。中国さんから」
「中国から?」
「君が風邪ひいてると日本さんの風邪が治らないからって持ってきてくれたんだよ」
「うぇー、中国の薬ってよく利くけど苦いんだよねー」
「いいからよくなりたいんだったらちゃんとそれ、飲みなよね」
「わかってるよー」

僕が抱えるもう秘密がまた一つ増えた。
本当は中国さんが持ってきたんじゃないんだ。
「そういう事にしとけ」って人に嘘つかせるくらいなら、自分で渡せばいいのに。もう!
大体中国さんに知られて嘘だってバレたら、僕はどうすれば……。
本当にもう、二人とも素直じゃないんだから、僕はいい迷惑だよ。
中国さんに言って、意地っ張りに利く薬作ってもらおうかな。
作品名:意地っ張りにつける薬 作家名:アンクウ