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インターネットに嫉妬

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(ああ そう そのまま おちてきては、くれないんだろうなぁ)

黒沼青葉は幸せそうな帝人の笑顔を思い描き、それが単なる幻想であることを噛みしめる作業を脳内で延々と繰り返しながら瞬きをした。童顔である彼の細められた瞳にはパソコンに向かい作業を続ける帝人へと向けられており、時折画面の青色に照らされて病的なまでに青白く思える帝人の顔に 青葉は空想を行った笑顔を重ねて見つめ、瞬きを合間に仕込んで退屈を紛らわせる。
「先輩、まだ終わらないんですか?」
「うん、もうちょっとかな」
かたかたとリズミカルに指をキーボートの上で舞わせながら、帝人は薄く微笑んだまま青葉へちらりと視線を向けた。従順な後輩の笑顔を貼り付けて帝人の作業を見つめている青葉は、帝人へ目を細める。
「飲み物でも要りますか?」
「いいよ、それより 暇にしちゃっててごめんね」
お願いを聞きにきてもらってるのに。帝人は笑いながらもかたかたとキーボードを叩き続ける。青葉は首を振って、いいえ、と笑い返した。熱を持ち始めている機械は帝人の指の動きに合わせてページを開きパスワードを問いかけリンクを辿り、やがて目当ての情報を導き出す。ああ、帝人はほっこりとした声を上げ、青葉へ笑みを見せた。
「やっと出てきた、これのことなんだけどね」
「はい ・・・ああ、これですか」
知ってますよ。青葉は答え、冷えた視線で帝人の「願い」を聞く体勢を整えた。理想を持って突き進む彼のことを、青葉は徹底的に補佐している。ときに打算的に、時々本能で行うその感情に、青葉の胸はまだ名前をつけてはいなかった。
「うん、ちょっとね ダラーズの障害になっちゃうかもしれないなって思って」
「成程。それは 危険ですね」
青葉はにこにこと笑いながら自分に指示を出す少年を見つめながら、大げさに驚いて共感してみせる。和やかな会話に見える物騒な話題は、青葉だけがその異常さに気付いたまま進んでいく。
「だからね お願い できるかな?」
「はい。勿論です。俺は先輩の手足なんですから」
帝人先輩の言うとおりに。青葉の答えに、帝人は照れたように笑った。青葉は帝人がマウスを動かし、パソコンをシャットダウンしていく様子を見つめ続ける。青白い光を消し、一挙に暗くなっていく画面を見た青葉は、ゆっくりと笑みを零し、先輩、と声を上げた。
「俺は、先輩のためなら何でも しますよ」
「・・・? ありがとう けど 十分働いてくれてるよ」
ぷつん 音を立て、パソコンは電源を落とす。青葉は ああ と嘆息をして、帝人へ微笑みながら 仄暗く苛立ちを深めた。

(このくらい簡単に 俺という存在に依存してくれれば)
(このくらい簡単に、落ちてくれれば)

(俺は 俺で 貴方に 尽くす 、けど )

作品名:インターネットに嫉妬 作家名:宮崎千尋