二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

休日プラン

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 






「………」
もそ、と微かに布団の動く気配。
ぱかりと音がしそうなほどの勢いで、アルフォンスは瞼を開いた。















「…?」
冬の夜明けは遅く、最小限まで照度を絞られたランプだけがともる部屋の中はまだ薄暗い。
何時だろう、と時計の置かれているランプサイドに首を巡らせようとしたとき、もそもそと腕の中で身じろぐ気配が。
「…兄さん?」
小さく声をかけると、肩口に埋まっていた黄金色の頭がひょこりと上向き、重たげに瞼が開いてアルフォンスを見上げる。
「…いま、何時だ?」
寝起き特有の掠れた声で問われ、アルフォンスは改めてサイドランプの方へ首を巡らせた。
時計が指していたのは、普段はちょうど目覚ましが鳴り響いている時間。
「6時半だ」
「…そか」
ちいさな声で呟くと、エドワードはぽすんとまたアルフォンスの胸に顔を埋めた。
「まだ寝られるな」
「そうだね、余裕で眠れるよ」
寝乱れた兄の長い金糸を指で軽く梳くと、エドワードの唇からはふう、とため息が漏れた。
「おはよう、はもう少し先だな」
「うん」
ふふ、と小さく笑って、アルフォンスはエドワードの背中に回していた手で兄の肩を抱いた。
「二度寝できるって、ちょっと得した気分かも」
「休みだしな、今日と明日」
くすりとかすかに笑う気配があって、エドワードの腕がアルフォンスの腰に回された。
兄さんあったかいなぁ、と思える自分の感覚が嬉しい。
「眠いなら、気が済むまでダラダラ寝てても平気だぜ」
「それはそれで、非常に魅力的なプランなんだけどね」
指先でエドワードの頬を撫でると、彼は顔を上げてアルフォンスを瞳の中に映す。
「せっかくの休みだもの。もう少し有効な使い方しようよ」
とん、とエドワードの額に唇を落とすと、ふわ、とやわらかな笑みを浮かべる。
「有効って?」
「そうだなあ…」
小さく唸りながら、アルフォンスは形の良い兄の頭を手のひらで撫でる。
まるんとしたそれを撫でるのは、密かにアルフォンスのお気に入りだ───そういえば兄もどうやら、自分の頭を撫でるのが好きらしい。




「何か、やりたいことでもあるのか?」
「うーん…正直言って、具体的にこれがしたい、っていうのはないんだよね」
頭を撫でた手をさらりと頬まで滑らせ、ふわりと包み込む。
「ただ兄さんと、ゆっくり過ごしたいだけ」
「ゆっくり、ね」
ん、と促すように目を閉じたエドワードの唇に、アルフォンスは自分のそれを重ねた。
「…まあとりあえず、二度寝するのは決定だよね」
「…だな」
小さく笑いあって、もう一度唇を合わせる。
「それから?起きてからはどうする?」
「えー、考えちゃうの?」
「とりあえず、適当に何か考えておこうぜ。別に計画倒しても良いんだし。な?」
なんとなく唇を離すのが惜しくて、微かに吐息が触れ合うほどに近い距離のままでエドワードが言うと、アルフォンスはうーん、と少し考えるような素振りを見せ。
「───起きてからブランチ食べて、リビングのソファで本を読んで。3時になったら、兄さんの好きなお茶を淹れて…」
「…それじゃあ、いつもの休みと変わりねぇだろ」
「だったら、ブランチしたらベッドに戻る?」
弟の指先がする、と首筋を撫でていき、思わずエドワードはぴくりと肩を震わせる。
「…ティータイムはナシにして、夕方までずっと抱き合う、っていうのも良いよね」
鎖骨の間を通って、アルフォンスの指はエドワードの寝間着の襟元で止まる。
「ゆっくりじっくり、思う存分、兄さんのこと抱きたいな」
「……あー、それでも良いけど。なんか爛れた過ごし方だな」
「いいじゃない、普段が仕事と時間に追われてばかりの生活だもん」
「確かになー…ここんとこ、視察だ任務だってバタバタしてたし」
残業で深夜まで残らされて、疲れに重くなった体を引きずって帰宅する道中、仕方がないと解っていながら寒空の下でため息をつくのもしょっちゅうだった。
「ボクはともかく、兄さんが連休取れるなんて、一体いつぶりだろうね?」
「…喜べんが、すぐには思い出せねぇくらい前だな」
若き国軍大佐と優秀な研究員、おまけにどちらも国家錬金術師。
職業柄忙しさは常に傍にあるけれど、いまは年の瀬も迫っているからか、軍司令部も研究所も慌ただしさが増している。
そんな中で、偶然にも二人で重なった休みが手に入ったのだ。
しかもぽん、と2連休。
互いに上司から休みの話を聞かされたとき、こんな時期に一体どういう風の吹き回しだと思ったものだ。
「だから偶にはさ、そうやって過ごすのも良いと思わない?」
アルフォンスの声が、甘えるような柔らかさを滲ませた。
「人間の三大欲求だけを忠実に満たす、ってことか」
眠って、メシ食って、セックスして。
「そういうこと」
琥珀色の瞳が、どうかな?と尋ねるように細められる。
「…ま、偶には良いか」
これまでの忙しさを考えれば、たまの休みくらい爛れた時間を過ごしたって、罰は当たらないはずだ。
休みが明けて出勤すれば、どちらの机の上にも書類だのレポートだのと小山が築かれているだろうけれど。
少なくとも今だけは、その現実を忘れていても良いだろう。



作品名:休日プラン 作家名:新澤やひろ