ブラックリスト
「 」
目の前にいるのは俺なのに、先程から帝人君は俺の知らない話ばかりだ。
楽しそうに話すその表情は嫌いじゃないからここはひとつ、大人らしい態度でにこやかに会話を聞き流していく。
相手が帝人君じゃなければとっとと離れて歩くのに、彼の隣はなんだってこんなに心地良いのだろう。離れられないじゃないか。
ごめんなさい、僕自分のことばっかり、そう言って俺の為に焦る君を見るのも好きだよ。
でもね。
幼馴染み兼親友。
気になる子。
憧れの人。
親友の知り合い。
一癖ある後輩。
非日常のカタマリ。
彼の周囲にはなんだってこんなに人が集まるのだろう。
まったく鬱陶しいことこの上ない。帝人君には俺がいるのに。他の奴らなんていらないだろう？
そう言えば目の前の子どもは黙って少し困ったような笑顔を向けるのだ。その顔は、好きじゃない。
だから舌に乗りかけた言葉をそのまま飲み込みながら、至極子どもめいた考えに自嘲の笑みを浮かべる。
彼に関わると自分の思考ですらままならななんて。
まったく碌でもない。
だが彼ほど自分を昂揚させる存在は今のところ見当たらないのも事実だ。
あーあ、みんなみんな、俺と帝人君以外消えちゃえばいいのに！