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藤谷 季多
藤谷 季多
novelistID. 10676
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貴方と祈りのカンタータ。

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俺の1日は小十郎から始まる。
(言っとくが寵童じゃねぇぜ?)


「おはようございます政宗様」

「…Ah……雨、だな?」

「先程まで降っていましたが、今は晴れて虹も架かっております」

「……そうか」


1週間続いた執務も昨日で終わらせた。
今日は久々の"休み"だ。


蒼と白の極力シンプルに作られた着物を着ると、眼帯は付けずに愛用している煙管だけを持って自室を後にした。

屋敷の屋根からはポタポタと雨粒が垂れ、庭木や小十郎の菜園も雨の恵みを受けて光帯びている。
庭土も随分と水を吸った為か、一歩足を伸ばせばぐちょり、と音を立てて沈んでしまった。

1週間の長期執務―――特に昨日は1日中自室に閉じ籠り、外の様子など気にする暇もなかった。
雨が降っていたことさえ知らずに仕事に打ち込んだのは久々だった。
その御陰で今日こうして羽を思い切り伸ばせるのだが。


「……もうすぐ梅雨明けだな」

雨は嫌いではなかった。
戦に於いては敵も味方もごちゃごちゃに混乱する。
おもしれぇ、まさにpartyだ!!


そして、雨上りの景色も数少ない癒しだ。
未だ霞掛かった空を見上げ、煙管に火を灯した。


(こんな平和な日が、続けばいいのにな)

戦乱の世に生まれた以上、それはそれは長い夢なのだろう。
だが俺は成し遂げる、奥州から世界を切り開くのだ。


何処か遠くから水鳥の声が聞こえた。
そのうちの1匹が竜の如く叫びをあげ、頭上を通り過ぎていく。

「Hey!お前等だってもう銃声は聞き飽きただろう??」

煙管の煙が竜の後尾を追い、高く高く蒼空に靡いて、消えた。


「政宗様、朝食の準備が整いました」

「Thank you,小十郎。今向かう」



この世界が雨上りの蒼快のように、いつまでも鳥の囀りが止みませんように

俺は俺のやり方で、戦乱の世に平穏を遍こう

右目も六爪も翼も総て揃っているから!



(LOVE and PEACE……ね。俺が築いて魅せるぜ、)



「小十郎!飯食ったら久しぶりに稽古でもしようぜ」

「いいでしょう、悪足場も学ばねばなりませぬからな」



煙管の灯はいつの間にか消えていた。
朝日が顔を出し終えた空にフウッと煙を吐き、朝飯をと足速に踵を返した。