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言葉にせずに愛の言葉を。

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「ギル、デートしよっか」
「……は?」

 朝早くから玄関のベルを鳴らされ、誰かと思って出てみればこれだ。満面の笑みを浮かべたフランシスにギルベルトは思い切り顔を歪めた。

「シス、お前熱でもあんのか?」
「うわ酷いなー、一言目がそれ? 他に言う事ないの、ギルちゃん」
「ねえよ。しかもなんだよその格好」

 フランシスの格好は白いスーツに青のストライプシャツ、ネクタイは赤だ。トリコロールカラーなのはいいが明らかに友人の家に遊びに来るような格好でもないだろう。

「だから、ギルをデートに誘いに来たんだって。デートならちゃんとした格好しなきゃね」
「……マジで言ってんのかよ、お前」
「大マジじゃなきゃこんな格好しないって。で?」
「……でってなんだよ」

 にこりと笑ったフランシスに顔を顰めてギルベルトは聞き返す。じとりと睨みつけてしまうのは相手の性格を良く知っているからだろう。

「デートしてくれるの? してくれないの?」
「……したいんだろ」

 仕方ねえなぁ、というそぶりでギルベルトは差し伸べられた腕を取る。途端に満面の笑みを浮かべたフランシスに引っ張られ、ギルベルトはその胸の中へ倒れ込む。

「うわっ、てめシス何して……っ!?」

 抗議しようとした瞬間、頬にちくりとした痛みと柔らかく暖かな感触を感じ、ギルベルトは目を見開く。少し遅れて耳にちゅ、と軽い音が聞こえて、ギルベルトはそのままフランシスを見上げる。

「Merci. すごく嬉しいよ」

 ふわりと微笑んだフランシスにギルベルトが呆気にとられていれば、隙あり、とばかりに鼻の頭にキスをされる。

「ばっ……なっ、おま……っ!!」
「さ、出かけようか。ギルの気が変わらないうちに」

 お兄さんのとっておきのコースに連れてってあげる、と笑うフランシスに腕を引かれ、ギルベルトは外へ連れ出される。
 色々言ってやりたい事はあるが、ふわりと笑った顔があまりにも綺麗でギルベルトは何も言えず、引かれるままフランシスの後を追いかける。
 フランシスは上機嫌に鼻歌まで歌い出し、ギルベルトはその浮かれように思わず吹き出す。

「お前、そこまで喜ぶことかよ」
「嬉しいよ? ギルの事が好きだからね」

 くるりと振り返って笑うフランシスの頬もほんのりと紅く、お互い様ならいいか、と笑ってギルベルトは小走りに隣へ並ぶ。
 たまにはこんなお互いも悪くない。そんな気持ちで手を握り返せば、またフランシスがふわりと笑う。
 そんな些細な瞬間が嬉しくて、ギルベルトはフランシスに笑いかけた。