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その目が僕を見ていた

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好きで好きで仕方なかった。
最初は憧れ。あぁ、カッコイイなぁ、なんて思ってた。
常人じゃ有り得ない腕力に吃驚したのが始まり。
臨也さんと初めて会ったときに自動販売機が飛んできた。普通自動販売機は飛ばないし、それを人が投げたとか信じられるはずもない!
何でもないように現れた静雄さんを見て、凄いなぁなんて思った。静雄さんは臨也さんしか見てなかったわけだけれど。
僕はいきなりの非日常に嬉しい動揺が隠せなかった。
それが一体どうしてこんなことになると思う?
いつの間にか静雄さんを考えることが多くなり、臨也さんが羨ましいと思う始末。
正臣には驚かれ、呆れられた。それは間違ってないと思う。
この気持ちが恋だって気づいたのは早かった。









「やぁ帝人くん」
「あ、臨也さん」

どうも、と頭を下げたら臨也さんがにこにこ笑顔で近づいてきた。
……あれ? なんか、いつもと雰囲気が違うような?

「ねぇ帝人くん。嫌な話を聞いたんだけど」
「嫌な話、ですか?」
「そう」

臨也さんはそう言って僕の顔を覗き込む。あまりに近い。近すぎる。
離れようにも臨也さんの手が僕の腕を掴んで離してくれなかった。

「君、シズちゃんが好きだって」
「え!?」
「で、いつもシズちゃんは俺を見てるから俺が羨ましい、とか」
「な、何で知って!」

ま、正臣? 正臣が言ったの!?
慌ててたら臨也さんはそれはもう深いふかーい溜息を吐いた。

「どこをどう見たら俺が羨ましくなるか分からないし、何よりシズちゃんのどこがいいの?」
「え、あの、なんていうかカッコ良くて最初は憧れだったと思うんです。僕にはそんな強さがないから。でもいつの間にか静雄さんが僕の頭を占めるようになって、もしかしてこれ」
「ストップ」

聞いてられない、そんな苦い顔で臨也さんが手で僕の口を塞ぐ。
……そうだよね、僕、浮かれて言ってしまったけど、僕も静雄さんも男で……でも分かってても静雄さんを好きになってしまったんだ。

「帝人くん。勘違いしているようだから言うけど、別に君が男を好きになったってことなんて何ら問題じゃない」
「え?」
「それがシズちゃんってことが問題」

臨也さんは手をどけて、また僕に顔を近づける。
だから近いですって。

「……何でシズちゃんなんだ」
「え?」

臨也さんと視線が絡んだそのとき

「イーザーヤァァアアア!!!」

聞き覚えのある怒声が聞こえてきた。
静雄さんだ、と慌てて振り返ろうとしたけれど、臨也さんの手が僕の背中に回って抱きしめてきたせいで振り向けない。

「臨也さん!」
「……帝人くん」

臨也さんは笑って僕に口づけた。口の端ギリギリに。
驚いている僕を後目に僕の額にまた口づけて僕を突き放した。

「じゃあね、帝人くん。シズちゃん!」

臨也さんはそう言って走り去る。
尻餅をついていた僕は呆然と頬に手を当てた。
……今の、なに?

「……立てるか」
「え、あ、はい」

突然上から降ってきた声に慌てて反応を返して上を見る。
そこには静雄さんがいた。
……静雄さん?
え、あっ! 立ち上がれば静雄さんはどこからか引っこ抜いてきた標識を落として胸ポケットから煙草を取り出していた。

「お前、確か竜ヶ峰だったか」
「え、あ、は、はいっ!」

名乗ったはずないのに何で知ってるんだろうと思ったら、それに気付いたのか静雄さんがセルティに聞いた、といった。
そうか、セルティさんがいた。

「……臨也と付き合ってんのか?」
「へ?」
「だってお前らキスしてたろ」
「あ、あれは……!! してない、してないですっ! 違います!」

顔をぶんぶん振れば、分かったから止まれ、目を回すぞ、と静雄さんに言われた。
確かにされたけど、でもそういう関係じゃなくて……そんな誤解をされたくなかった。
……好きな人に。

「ならいいが……臨也は止めとけ。後悔する」

ふぅ、と静雄さんが息を吐く。煙草の煙がすぅと消えていった。
違います。僕が好きなのは臨也さんじゃなくて静雄さんなんです、と言えたらどれだけいいだろう。
臨也さんさんや正臣の前で言えた言葉は本人の前では出ることが出来ない。
静雄さんは吸っていた煙草を携帯灰皿を直してから落とした標識を持ち上げた。

「……あの、静雄さん」
「なんだ」
「着いていって良いですか?」

そう言って静雄さんを見れば、不思議そうな顔で僕を見ていた。

「……別にいいが」
「ありがとうございます」

今は横にいることが出来るだけで良い、そう思った。
でも、臨也さんの最後の笑みが頭から離れないのはなんでだろう。


- end -



本当は普通に静帝はくっつく予定だったのになんか臨也が頑張ってしまった(笑)
秋海
作品名:その目が僕を見ていた 作家名:秋海