何かが壊れた
「あ、のさ…好き?みたいな…んだ…けど…。」
水谷の顔がまっかっかだ。
俺は彼の言葉の意味なんか考えずに、ただそんなことを思ってた。
夕日が赤くて、教室ががらんとしてて、遠くで人の声がして。
そんなすべてを考えて、水谷のことは考えないようにした。
何だか勿体無くって。悲しくって、切なくって。
俺の心のどこかが、壊れた音を立てて凍り付いてるみたいだ。
水谷があと少し、俺の返事が遅ければ確実に泣くな。
とか、
心臓が馬鹿見たいにうるさいな。
とか、
手をぎゅっとしてなきゃ震えてしまう。
とか。
ああ、水谷。
お願いだ。
そんな顔するなよ。
俺はお前が思ってるようないい人じゃないし、
優しくもないし、ましてやお前に惚れて貰えるほどの価値もない。
優柔不断で、神経質で、曖昧なだけなんだ。
キリキリキリ。
もう一度俺の心のどこかが音を立てる。
やめてくれ。みないでくれ。
好きなんだ。
お前のことが、お前を見ているのが。
だから、この、
ただ見つめるだけの、優しい関係を
どうか毀さないで。