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雨の降る音

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しとしとと降り続く雨に、彼はじっと空を見上げてる。

昼休みの廊下の行き止まり。二人意外誰もいないそこで、
俺たちは特に言葉を交わすわけでもなく、ただじっとそこにいた。

軽い、プラスッチクを軽く叩くような音が手元からする。

キリキリキリ。
チリチリチリ。

俺のiPodは俺のお気に入りの曲をなかなか出してくれない。

検索列は ”S”

この日にぴったりの曲。

“ Singin’ in the rain“”

ジーン・ケリーのミュージカルソング。明るい旋律と、
ステップを踏むようなリズムとは裏腹に、
俺はこれを聞くとなぜだか恐ろしくなる。
けれど、こんな雨の日には必ず聞いてしまうほど好きな曲だ。

「よく降るね。」

液晶の画面をすべる大量の文字にまぎれそうな感じで、
彼がポツリと呟いた。

俺は条件反射のようにそれに答える。

「でも、部活までには晴れるよ。」

「何で?」

意外にも返ってきた質問に、俺はふと自分の言葉なのに
なぜだろう?と考えてしまった。

でも、確かにそう思ったんだ。
不思議だね。

なかなか答えようとしない俺に痺れを切らしたのだろう。
彼は重ねて問う。

「何でそんなことわかるんだよ?」

カチカチカチ。

“sin…g”

あと少し。

“sin……gin’…in…th…”

もう少し。



“sin……gin’…in…th…e…ra…in…”



とたんに流れ出す、軽快なメロディ。

蘇る狂人の歌声。

ああそうか、「時計仕掛けのオレンジ」だ。



だから俺はこの曲が

好きで好きで、恐ろしい。





「雲の色が違うでしょ。」



そう答えればなおも彼はわからないという。

俺は心の中がひどくすっきりした気がして、
窓から見える空を見上げて、少し笑った。



「晴れる間際の雨雲は、少しだけ光るんだ。」



晴れれば、あなたとボールを追える。

そう、思いながら。


作品名:雨の降る音 作家名:空太