二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

沈殿する部屋

INDEX|1ページ/1ページ|

 


同棲してるふたり。





窓の外は、ここ最近で一番の豪雨に見舞われていた。雨の一粒一粒がでかいんや。ダー、と雨の音が部屋に響く。俺は静かに目を閉じた。


(ええ音や)


ずずっと体が重力にしたがって床に落ちていく。二の腕にダイレクトな冷たさが伝わってくる。俺の体温とええ勝負や。閑散とした部屋には、俺の微々たる呼吸音と雨の音しか響かない。ああ、世界が終わるみたいやな。ありきたりやけど、このまま世界は終わる。大雨で沈むんや。


(この部屋が、いっちゃんはじめに、沈めばええ)


どこよりも早く、沈めばええ。床に投げ捨てていた携帯を手に取り、かこかこと文字を打っていく。かこかこ、送信、と。「送信しました」を見てぱたんと携帯を閉じ、また投げた。今度は、立たな取れん場所にいってしもたな。息がつまるが、嫌いじゃない。もっと、息苦しくなればいい。なんや、病んどるみたいやな、俺。


(しょうがないねん)


憂鬱なんや、この部屋に一人なんて。


(謙也さん)


ふいに、カーマインのカーテンが揺れた。なんで赤やねんと謙也さんはこのカーテンを選ぶときに言った。赤やのうて、カーマインや。アホな謙也さん。


「光」


静かな声が、部屋に響く。ぱっと振り返れば、びしょ濡れな謙也さんがそこにおった。


「な、」
「光」


体を持ち上げようと力を入れた刹那、ばたんと俺にのしかかる重み。謙也さんがぶっ倒れた。


「ど、ないしてん、」
「光」


そして、そのまま俺にキスをした。


「光、」


この人にしては弱々しい声。ああ、きっとこの人も、


「光」


どちらからともなく、俺たちはキスをした。


作品名:沈殿する部屋 作家名:岡口