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きっと、特別

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日向はスキンシップが激しい。
それは誰に対しても平等に公平に同等に。その触れ合いは日向の明るさと人懐っこさからくるものだから、きっと本人は意識したこともないんだろう。
けれど、…ユイに対しては、少し過剰な気がする。ユイは積極的に日向に絡んでいくし、日向も売られた喧嘩はと必ず買う。…なんて、考えすぎかもしれないけど。喧嘩するほど仲がいいって言うし。


「おーとなしっ!」
「う、わ…っ!」


すると後ろから突然、日向が勢いよく抱きついてきた。俺の首に腕を回したまま嬉しそうに頬を擦り寄せてくる日向は、やっぱり犬みたいだ。それを見て、さっきのもやもやが消えかけた気がしたけど、日向の青髪に透けて見えたピンクを見つけてまた胸が痛くなった。

「…ユイと、一緒なのか」
「勝手についてきやがるんだよ」


はっ、と鼻で笑うようにユイを見る日向。
ああ、そんな挑発するようなことしたらまた一発食らわされ…


「もっぺん言ってみろコラァ!!」

…た。ユイの小柄な身体が跳ね上がったと思うと、細長い脚が曲線を描き青空に吸い込まれる。否、日向の後頭部に。
そしてまたそれに応戦する日向。ユイの首に腕を回してぎりぎりと締め上げ、息の根を止めようとしている日向は、だけど楽しそうで。


(…あ、なきそう…)


二人の仲の良さにどうしてだか、ぶわりと瞳に涙の膜が張る。瞬きをしようものならはらはらと零れおちていきそうな涙、なんだこれ、おれ、どうしたんだよ。


「おとな…っ、音無!」
「ひ、なた…」
「なんで泣いてんだよ、どうした?」
「わっ…わかんねぇ、っ」


結局零れおちてしまった涙に気づいた日向は、俺の頭を撫でながら涙を拭ってくれた。その優しさにまた涙が溢れて、まるで子供のように泣きじゃくる。


「先輩どうしたんですか…?」
「…音無、体調悪いみたいだから部屋まで連れて帰るわ、…よっと」


その掛け声と同時に身体がふわりと軽くなり、涙で歪んだ視線の先には至近距離で日向の顔。お姫様だっこなるものをされているのだと気づいた瞬間、涙が止まり、顔に火がついたように熱くなった。
日向のにおい、日向との距離、なにより自分と身長差の対してない俺を軽々抱き上げる腕の力強さに、胸が高鳴る。


「音無、苦しくねぇ?」
「…ん」
「じゃ、行くぜ」
「音無先輩、良かったですねっ」


歩き出した日向には聞こえないように、ウインクしながら小さく呟いたユイ。
まさかあいつ、わざと…?
そんな考えが頭を過ぎった。けれど、スキップしながら遠ざかるユイの背中は少し寂しそうだったから、ありがとうとごめんなを混ぜた気持ちになった。



「ありがとな、日向」
「…部屋帰ったらちゃんと話せよ?」
「分かってる」


ゆらゆら、日向の体温に包まれながら揺れる。さっきまでの感情はきっと嫉妬心だと自覚しながらも、部屋に帰ったら日向になんて言い訳をしようかと考えるため、そっと目を閉じた。







end
作品名:きっと、特別 作家名:鈴野