きみとおひさまびより
ひらり、ひらり。
木陰で居眠りをしていたとき、ふと、鼻の頭に舞い落ちてきた花びら。そういえばこの世界に季節はあるのだろうか、…まぁ考えたところで答えは出ないんだけどだ、こうして桜が舞うということは春なんだろう、多分。
「…ふぁ」
そういえば居眠りの真っ最中だった。
また木に背中を預けて、落ちてくる瞼に逆らわず目を閉じる。まどろみの中に落ちる感覚が心地よくてそのまま夢の世界へ旅立とうとしたところで、ちゅ、と唇になにかが触れ、目を開いた。
「…っ、…日向か」
「なにしてんだー?」
「…ひるね」
「あぁ、眠そうな目してんな」
「んー…ふあぁ、」
いつの間にか同じように隣に腰を下ろしていた日向。うるさいのが来たなあ…なんて思いながらも眠気には勝てずあくびを漏らすと、日向の手が俺の頭を撫でる。そしてそのまま、首を傾げるように日向の肩に頭を乗せられた。
「なぁ…寝るまで」
「え?」
「頭、撫でててくれるか…?」
「お前…それは反則…!」
ぐり、と照れ隠しのように頭を撫で回される。日向の大きくて暖かい手の平は春の陽射しのようで、すごく心地が良かった。だからだろうか。少し乱暴に撫でられているにも関わらず、瞼がどんどん重くなって、手を伸ばせばすぐにでも夢の世界へダイブできそうなくらい。
「日向の手は暖かいな…本当に日向にいるみたいに、きもちい…」
隣にいる日向の肩に擦り寄ってすんと息を吸い込めば、おひさまのように包み込む日向のにおい。うとうと、なんだかひなたぼっこをする猫にでもなった気分で、驚くほどにゆったり、意識は白に落ちていった。
「…おやすみ、音無」
end
作品名:きみとおひさまびより 作家名:鈴野