6月の花嫁
視界を覆うそれに手を伸ばすと、その正体がシーツだということが分かる。
「…なに?」
「シーツだよ」
「それは分かってるけど…」
悪戯の犯人である沙樹に、正臣は問いかける。
しかし返ってきた答えは正臣が欲しいものと異なっていた。
「シーツ、ちょっとヴェールに似てない?」
「…だったら俺じゃなくて、沙樹が被るべきじゃん」
「そんなお約束のことしても面白くないもん」
クスクス笑いながら、沙樹は正臣の正面へと回りこむ。
むっとしてる正臣をなだめるように、沙樹はシーツを少し上にずらした。
「絶対これ、沙樹がやった方が似合うって」
「だからそれじゃ面白くないじゃん」
「面白いとか、そういう問題じゃなくって…」
はあ、とため息をつきながら、正臣は頭上のシーツを沙樹にかけ直した。
「はい、これが正解。俺が花嫁じゃなくって沙樹が花嫁さん」
「…なんか、恥ずかしいね」
「だろ?沙樹はそれを俺に強制してた訳だから、今度は沙樹の番な」
そういって、正臣は沙樹に笑顔を向けた。