夢
……無理もない、目的はあるとはいえ、いつに終えるかもわからない旅の途中であった私の姿はお世辞にも立派とは言えず、腰に帯びた剣も警戒心をあおるのは当然のことだ。
このような反応はもはやなれていて、ここがその地ではないことが明らかになったならすぐにでも離れるつもりであった。
そう思っていたとき彼女に声をかけられたのだ。
「あなた、旅人?」
声の主は少女という年齢ではないだろう、が輝いた目が彼女を若々しく見せていた。
「そうだが」
「私、小説家を目指していて、だからあっちこっちであったお話聞きたいの」
まじまじと彼女の姿をみる。自分と同じように服の状態はよくない。おそらく食事にも困っているのだろう。やつれて見える。だが……。
「そうだな、すべてを話すことはできないが少しなら……」
本来なら巻き込んだり、迷惑をかけたりしないため関わり合い話避けるべきであったのだろう。だがそんなことを言ったのは自分と彼女が似ていると思ったのかもしれない。
どんな逆境でも、苦しい時にも負けない“希望”という支え。絶対にくじけないという強い意志。未来へ抱く夢は“悪夢”にも負けない。
……われらは同じものを持っている。
「自己紹介をしていなかったわね、私は……」
彼女の本、『パピィ・ポッティと愚者の石』がベストセラーとなるのはまだ遠い先の話である。