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琴咲@ついった
琴咲@ついった
novelistID. 841
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脂肪の塊は不公平

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 真夏日を通り越して猛暑日になると朝の天気予報では言っていた。なるほど確かに身体全部が溶かされてぐずぐずになってしまうんではないかと疑うような熱気があたりにたちこめている。少し離れたところで砂埃が舞う喧騒が起きているため、余計に暑く感じるのかもしれない。ぼんやりとそれを眺めていると、順々に立っている影が減っていき、最後には1つになった。その影がゆらゆらとした足取りでこちらに近づいてくる。向こうも俺を認識したらしく、一瞬だけ歩みが止まった。しかし結局は進行方向を少し横にずらして、俺から3メートルほど離れた場所に座った。
「なんでこんなとこにいるんだよこのノミ蟲野郎。さっさとどっか行きやがれっていうかいま授業中だろ」
「授業中なのはシズちゃんだって同じでしょ。それに俺だって別に好きでここにいるわけじゃないし。どっかのおばかな誰かさんがクーラーの操作パネル叩きわっちゃったせいで教室が蒸し風呂状態になっちゃって耐えられないんだよねぇ。シズちゃんこそさっさと教室戻ったら?」
「あちぃしめんどくせぇ。ほんとならてめぇをぶっ飛ばしたいがそれすらめんどくせぇ」
 ここ第二グラウンドの用具倉庫裏は木がかなり繁っているため、今日みたく蒸し暑いけれどもそれなりに風がある日はほどほどに快適だ。特に木陰になっているうえひんやりとした倉庫の壁にもたれることができるこの場所は気に入っている。普通の生徒は平和島に遭遇してしまう可能性が高いからと、ほぼ近寄ることがないのも都合がいい。
 パタパタと耳障りな音に反応して横を向くと、シズちゃんがブラウスの胸元を掴んで少しでも服の内側に風を送りこもうと足掻いていた。
「今日は黄色かぁ……」
「あ゛ぁ?」
「いいんじゃない頭の色とお揃いで。なんかばかっぽそうなのが超お似合い」
「なんの話だよ」
「なにって君のブラの色だよ。ブラウスって汗ですぐ下着透けちゃうから大変だよねぇ。俺みたいにセーラーにしたら?……ってあぁそういえばシズちゃんセーラー壊滅的に似合わないんだっけ。いやぁ胸ありすぎるのも大変だよねぇかわいそーう」
 あはははと笑いとばすと、ガンッと倉庫の壁が凹む音がした。少し距離があるここまで背中越しにビリビリと振動が伝わってくる。
「そういうてめぇは真っ平らな胸にセーラー服がよく似合ってっぞぶん殴りたいぐらいになぁ!」
「やだシズちゃんこわーい。いくら俺が羨ましいからって嫉妬でキレるのはどうかと思うよ。そうそう真偽が気になってるからきくけど、胸大きいと夏は谷間に汗疹できちゃうってほんと?あっでもシズちゃんの化け物みたいな再生能力じゃそもそも汗疹なんてできないかぁ」
「さっきからぐだぐだうるせぇ。てめぇこそ胸がないからって負け惜しみ吐いてんじゃねぇよノミ蟲……つかマジで平たいよな、ちゃんと胸あんのか?」
「あーりーまーすー」
 目を閉じて正面から吹いてくる風に意識を向けていたせいで、音もなく近寄ってくる気配に気付くのが遅れた。
「ひゃぅっ!?」
 突然がしっと胸をわしづかみにされて、反射的に仰け反る。
「……おいこれほんとに胸か?」
「はぁ?人の胸もんどいて何言ってんの頭大丈夫?」
「いやしかしこれはいくらなんでもっつうかもめるほどねぇだろ」
 眉を潜め心底心配そうにするシズちゃんに苛立つ。胸なんかしょせん脂肪の塊だろう。がしっと逆にシズちゃんの胸を掴み返してやる。
「ってめ!なにすんだノミ蟲ィ!!」
「シズちゃんだって俺に同じことしてんじゃん。シズちゃんがその手をはなしたらやめるよ」
「てめぇからはなせ」
「いやでーす」
 しかしシズちゃんのおっぱい、片手で全部覆えないくらいでかくてうざい。一体どうすればこんなに成長するんだ。
「ていうかシズちゃん力いれすぎ!痛いんですけど!」
「てめぇの胸がないのが悪い!おまえの胸はあれだな、貧乳じゃなくてひにゅうだな、悲しい乳で悲乳」
「はぁ!?俺と同じサイズの全国の女子バカにしてるわけ?そしたらシズちゃんは巨乳じゃなくてきょにゅうだよね、虚しい乳で虚乳。あっでも漢字わからないかな?頭にいくはずの栄養全部胸にいっちゃったんでしょかわいそーう」
「ちげぇよ!俺は牛乳飲んででかくなったんだよ!てめぇも牛乳のめ牛乳」
「おっぱいに牛乳はつまってまーせーんー」
 思いっきりバカにした口調で言ってやれば、シズちゃんの顔に青筋が浮かんだ。一瞬怯んだが、幸い胸が破裂するなんて事態は起こらなかった。掴まれた胸も痛かったが、掴んでる腕もそろそろ疲れてきた。いつまでこうしてればいいのだろうかとじりじりしていると、キンコンカンコーンというチャイムの音が現実を告げた。まるで促されるかのように手をはなせば、シズちゃんもつられるように手をはなした。
「おれら一体何してたんだろうな」
「ほんとだよ心底ばからしい。あーあせっかく涼むつもりだったのにシズちゃんのせいで台無しだよ」
「てめぇのせいだろうが」
 暑さに頭がやられていたとしか思えない所行をふり返りながら、汗ではりついた前髪をかきあげる。こんなばからしいことをしているくらいなら教室にいる方がまだましだ。
「おい、牛乳のめよ」
「……余計なお世話だよ」
 背中にかけられた声に舌打ちをする。シズちゃんのおっぱいなんて夏の暑さと共に溶けてしまえ。