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今だけは、僕だけの君で

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僕は、ここに、いるのです。



人混みの中に、ぽつり、と所在なげに立つ小さな身体。
声をかけると、少し驚いたように彼が振り向く。
「ああ…こんにちは、カナダさん」
にこ、と微笑む。嬉しそう?いや、日本さんのこれは、別段感情の起伏を原因とした表情ではない。
一喜一憂しそうな自分を戒めて、僕は笑いかける。
「こんにちは。どうかしたんですか」
ぱちり、と瞬きをして、日本さんは首を傾げた。
「どうか、と言いますと…?」
しまった、と思った。そう、僕は通りすがりなのだ。
「いえ、何か、探しているのかと」
誤魔化して、僕は笑った。そう、探しているように、見えたのです。
言うと、日本さんは苦笑して、違います、と否定をした。
「探しているわけではないんです。人を、待っているだけで」
「そうなんですか」
来もしない、相手を待っているんですよ、ね。僕は、素知らぬふりをして、笑いかけた。
「あなたを待たせるなんて、酷いですね。忙しいんじゃないですか?」
「いえ、忙しいわけではないんですが」
ちらり、と時計に視線を走らせる。ああ、もう、30分は経ちましたよ。
「待っても来ない相手が来るのを待つより、僕とお茶にでも行きませんか」
言うと、彼は少し首を傾げて、小さく笑った。
「そうですね。それもいいかもしれません」
差し伸べた手に、手を重ねる。僕を、選んで。
喝采を上げたいほど高揚した僕の耳に、小さな日本さんの呟きが届いた。
「私が待っていたのは、あなただったのかもしれませんね」
他意なく言った彼の言葉が、胸に刺さる。
気にせず、僕は笑った。そうかもしれませんね、なんて嘯いて。



それでもいい、自作自演と言われようと笑われたっていい。
あなたを少しでも、独り占めが出来ることと引き替えならば。