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君が笑ってくれればそれで

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別に特に何の異変もないある日のことだった。


俺は先生に頼まれた資料を理科室まで持っていく最中だった。

「…っ」
「…臨也?」

角を曲がったところで臨也にぶつかった。その弾みに資料を落としそうになったが何とか体勢を整え、臨也を見ると悔しそうに顔を歪ませていた。
滅多に見られない臨也の表情に俺は目を丸くした。

「どうしたの…?」
「別に…っ、何でもない…!」
何でもなさそうには見えないな、と内心思いながらも俺はそう、とだけ呟いた。
「新羅、それ理科室まで持っていくんだろ?付き合うよ」
「…いや、別に大丈夫だよ。臨也は先戻ってて」
「…でも」
「僕も次の時間サボるから先に屋上に行ってて」
何か言いたげな臨也を無視してそういうと臨也は渋々と頷いて先に屋上へ行った。俺は理科室に資料を置いてさっさと臨也が待っている屋上に行こうと歩いていると

「にしても本当折原って気持ち悪いよな」
と声が聞こえた瞬間、無意識に俺は足を止めた。廊下の隅っこで男子2名が気色悪い笑みを浮かべてくすくすと笑っている。
「人間が好きなんだ、なんて彼奴頭イカレてんじゃねえの?」
「気色悪いって言ってもそれでも好きとかありえねぇ。しかも一緒にいる岸谷も岸谷でなぁ…」
「ってか、岸谷の文句言った瞬間折原キレてたよな、彼奴ってホモだったんじゃね?」
次々と聞こえてくる臨也の悪口を壁に凭れながら聞く。さっき臨也が悔しそうな顔をしてたのはコイツ等が原因か。

臨 也 を 傷 付 け た の は コ イ ツ 等 か。

「ねぇ」

ゲラゲラと下種な笑いを浮かべている男子生徒たちに俺は壁に凭れかかったまま話しかけた。

「あ?…ゲッ、岸谷」
俺を見てヤバイ、と言いたげに顔を青ざめさせる男子生徒を視界の端に入れ、俺はにやりと笑った。




「臨也」
「新羅、遅い」
屋上に行くと待ちくたびれたと言いたげに苦笑している臨也の隣に座った。風が心地よくて今日はこのままずっとサボってしまおうかなんて思ってしまう。
「…いい天気だね」
俺の肩に頭を置いて俺に寄りかかる臨也に俺は小さく微笑んでそうだね、と呟いた。



その日、男子数名が原因不明の発作に倒れ病院に運ばれたらしい。

怖いなぁ、と言葉とは裏腹に楽しそうに嬉しそうに笑う臨也に可哀想だろと俺は言いながらも内心では嬉しそうに笑う臨也を見てほくそ笑んだ。