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【腐向けAPH】小さなしあわせ【香中】

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嫌な夢を見た。
世界が壊れて、大切なひとが皆いなくなってしまう、夢を。

そこには、日本さんも韓国も台湾も、イギリスもいなくて。
俺が1番好きなあのひとの姿も勿論、無かった。
――それとも、この世界には最初から俺しか居なかったのだろうか。

がらくたばかりが転がる世界で、
俺は独りぼっちで叫んだ。

「・・・っあ、」
不意の覚醒によって、その地獄のような世界は消え去る。
一瞬の空白の後、ああ夢だったのか、と気付いた。
居間で壁にもたれて読書をしている内に、いつの間にか眠っていたようだ。

窓から差し込む光に照らされている室内は、いつもと何ら変わらずそこにある。
――自分の頬は、涙で濡れていたけれど。

涙を拭おうと腕を動かしかけたが、何かに妨げられて動かせない。それに気付くと同時に耳に入ってきたのは、規則正しい寝息。
視線をそちらに向けると、俺の肩に頭を乗せて眠るひとの横顔が見えた。

「先生・・・」
俺がうたた寝をしている間にやって来たようで、二人の体にはブランケットが掛けられている。
安心しきった、幸せそうな寝顔。
この寝顔を愛しいと思い始めたのは、いつからだっただろうか。

俺がイギリスの家から帰ってきた時、先生は泣いて喜んでくれた。
――ずっと待っていてくれたんだ
――この人の弟で良かった
そう、心から思った。

〈自分を必要としてくれているならば喜んで尽くそう〉
そう、自らに誓いをたてた。

それから何回も季節が巡って、慕う気持ちがいつしか愛情に変わっても、俺達の関係はしょせん兄弟で。
この気持ちを伝えるには俺は未熟すぎたし、二人の距離は不都合なほどに近かった。

それでも、報われない想いに焦げ付いた心を癒してくれたのは、いつだって先生の笑顔だったのだ。

「I love you・・・」
先生を起こさないように、自由なほうの手で頭を軽く撫でながら、イギリスに教わった愛の言葉を小さく呟く。

いつか、きっと。
きっと、堂々と言えるようになる筈。
正面からしっかりと眼を見つめながら、自信を持って言えるようになるまで――

「・・・もう少し、待ってて欲しい的な」

その日まで、決して遠くはないから。
今はこうして、隣にいてくれるだけでいい。