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happy birthday dear

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「いやぁ、今日は皆本当にありがとな。」

梅雨の晴れ間、ほんのわずかに上がった雨上がりの夕暮れに、
和己のおおらかでうれしそうな声が響く。

「主将なんっすから、とうぜんっすよ!」

利央があんまり必死に言うものだから、和己のほか見守っていた三年生は
思わず笑ってしまう。

梅雨の最中のこの日、和己はめでたく18歳の誕生日を迎えた。
いつもへろへろになるまで練習して、疲れ果てて帰る桐青野球部の
メンバーであるが、
皆の大事な主将が生まれたこの日だけは、さまざまな趣向を凝らして
高校生らしく精一杯盛大に祝った。

その心遣いが染み入って、思わずほろりと来るものがあったが
和己はいつものようにおおらかな笑いで皆に礼を言った。

皆が嬉しそうにそれに答える中、一人だけ貼り付けたような笑みを
浮かべる者が、和己の視界に引っかかっる。

彼のエース、高瀬準太だ。

和己は表面上は全くそのことに気づかない素振りを見せつつも、
ぞろぞろと校門に向かう一団の中でそっと、さりげなく準太の横を歩いた。

そして皆から贈られたプレゼントの山の紙袋をがさごそいわせつつ、準太に声をかける。

「全くいいやつらばっかりだなぁ。」
「ホントですよね。よかったっすね。和さんも。」

相変わらず済ました顔でニコニコと笑う準太を見て、
仕方なさそうに和己は肩を竦めた。

「…それで、準太は何をすねてるんだ?」
「え?拗ねてなんかいないですよ?なに言ってるんですか、和さんってば。」

「ならどうして俺を見てくれないんだ?準太。」

和己のひどく悲しそうな声に、一瞬にして準太は顔を真っ赤に染めると
その場に立ち尽くし、うなだれてしまった。
さわさわと遠くに人のざわめきが聞こえる。いつの間にか、ほかの
メンバーから置いていかれたようだ。

「…ごめんなさい…。」
「ウン、別に謝んなくていいんだ。」

よいしょ、と和己は荷物を片手に器用にまとめると、空いた手で
ポン。と準太の頭に手を載せる。

「ただな、俺は皆に祝ってもらうのももちろんだけど、何よりお前に
祝ってもらうのが楽しみだったんだよ。」

優しい、優しい言葉に準太の大きな目には見る見るうちに涙のドームが出来てしまった。

「…!!ごめんなさい、ホントすんません…!ほ、ホントは、今日は俺だけ和さんと
帰りたくって、ケーキも予約したのに、なんか皆もパーティ企画したりしてて、
いやだったのに言い出せなくって、それで…すんません…!」

顔をくしゃくしゃにして、子供のように泣き始めた準太の頭を
さらさらとなでて、和己は微笑んだ。

「『すんません』じゃなくて『おめでとう』って言ってくれ、準太。」

「……!!お、おめでとうございます…!和さん…!」
「ウン、ありがとう、準太。」

和己が穏やかに礼を言うと、準太が泣きながら和己を祝い、また和己がそれに返す。

そんなことを繰り返しながら、手をつないだ桐青バッテリーは
ゆっくりと昇降口に向かっていった。

誕生日の夕暮れが、穏やかに終わっていく。



















「は…はずかしいぃぃぃぃぃ!!なにあの夫婦漫才!!」
「迅!俺は絶対誕生日は二人きりで過ごす派だからな!」
「…え?あ、はぁ…。」
「心配しなくても慎吾の誕生日会は誰もしないよ。」
「…真実でもそれは隠しておくのが優しさですよ、ヤマサン。」
「………お前もな…タケ…。」











作品名:happy birthday dear 作家名:空太