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甘味

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雷蔵ただいま、おや今日は閉じこもって読書だったのかい、さすがは図書委員だね、今日は何の本を読んでいるの、なんだ最近はずいぶんな古典を好んで読んでいるんだね、こないだは風土記だっただろう、今回は天平時代の歴史書か、骨董もいいところじゃないか、面白いかいそれ、…そう、じゃあ今度私にもかしておくれよ、だって君が面白いと言うなら興味がわいてくるじゃないか、…お、流石だね、鼻が利くよね雷蔵は、ほら君の好きな弥勒屋の団子買ってきた、いや、別にわざわざ行って来たわけじゃない、ただお遣いの途中に前を通ったから買ってきたんだ、前を通ってみたらし団子の匂いを嗅いだら、雷蔵がお団子食べて幸せそうな顔をしているのが目に浮かんだから、それを現実にしてやろうと思って、ただそれだけだよ、…ああきっと君はそう言うと思った、残念ながら草団子は今日は売り切れていたんだよ、私のお遣いが終わったのがちょっと遅かったから、いや、ええとそうじゃなくて、ほら、お遣いの帰りに買ったんだよ、わざわざ行ったんじゃないってば、そういうわけで草団子はないから今日はみたらしとあずきで我慢しておくれよ、そうだ、弥勒屋のご亭主がおまけをくれたんだよ、珍しいだろう、馬鈴薯で作った甘納豆なんだとさ、私もひとつ店で頂いたんだがなかなか美味しかったから雷蔵にも貰ってきたんだ、ほら口開けて、…どう?不思議だろう、豆じゃなくても甘納豆って名前をつけるんだと私も不思議に思ったけれどね、これは食堂のおばちゃんに言って作ってみてもらいたいなと思ったよ、…うん、団子もどうぞ召し上がれ、いや私はいいんだ雷蔵に買ってきたんだから、雷蔵が好きなものなんだし、雷蔵が食べる顔を見たかっただけだから、…うん、その顔、本当に美味しそうに食べるよね君は、見ているこっちまで甘くておなかいっぱいで幸せな気分になるよ、…ねぇ、変なことを言うけどさ、雷蔵は甘いものが好きだから、きっと体の中も甘いだろうね、どこかに人食いの鬼がいて、雷蔵がその鬼に食べられたら、鬼はきっと驚くね、甘い、なんだこの人間は!なんてね、血の一滴まで砂糖の様に甘い雷蔵、ふふ、変なの










…甘いかどうか、ちょっと食べてみる?
作品名:甘味 作家名:一二三