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伝説の……

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A:aqua――水にはいい思い出がない


 何を語れって言うんだ。水なんて関わりたくないんだ。知っての通り、俺は根っからのカナヅチだからな。近所の川で遊んでいて溺れたの、まさか忘れたわけじゃないだろ?
 あれ以来、もう水という水がダメなんだ。川や池はもちろん、風呂だって怖い。湯船には浸からずに烏の行水だな。まるで吸血鬼だろ。
 水溜まりを覗き込んだことはあるかって?
 そんなことあるはずがないだろ。俺が思うに、水溜まりってのは異世界への入り口だぞ。そう、雨上がりの水溜まり。一番透き通ったやつが、一番怪しいだろ。あの向こう側には、別世界が広がってるんだ。きっと綺麗で、怖ろしい世界が。ま、俺は覗き込むどころか近付くのだって御免だから、関係のない話だけどな。
 でも、おまえは気をつけろよ。ただでさえ空ばっかり見上げて、しょっちゅう転んだり電柱にぶつかったりしてるんだから。たかが幼馴染とはいえ、おまえにいきなりいなくなられたら……、困る。
 いや、何でもない。別に深い意味はない。全くない。無いったら、ない。そのゆるみきった顔で俺の顔を覗き込んでくるな!

作品名:伝説の…… 作家名:空創中毒