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なはない

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夢の内容を覚えていないのは、少しばかり日常を適当にあしらってきたせいかと自問した。
答えはもちろんなく、それ以上考えるのも厭になったので銀時はそのまま太陽の光が指している畳に寝転がった。右腕で頭を支えて、目線を障子に移す。その軽く爪を引っ掻いて残った障子の傷を覗き込んで、銀時は欠伸をした。夢の内容など、覚えてはいない。
開いた窓の向こうに電信柱の線がみえた。いくつもの蜘蛛の糸のような線に乗っている小さな白い鳥を見つけて、銀時はそのまま鳥を見つめていた。羽根を震わせて眼を閉じている。寒いのかね、と独り言で呟くと後ろから呼び声がした。あの少年の独特なまだ高い声。

「銀さん? 寝て…ないですね」
「寝てます」
「いや、起きてんじゃん」

軽いツッコミ。それだけで少しありがたい、なんて思う銀時は夢の内容を思い出すべきか少し悩んだ。たった10秒ほど。
それから、畳の上に座り込んだ新八に向かって銀時は、どしたの、と訊き、新八は言葉を濁した。別に用があったわけじゃないんですけど、というなり口を閉じた。
電信柱の線の上では白い鳥が震えていた。身を寄せ合う仲間がいないのか、陽は当たっているのに震えていてずっと眼を閉じている。それなのに畳の上はあたたかい。

「寒いですか?」

と、突然新八が話を振ってきて銀時は右手を畳の上について起き上がって「いんや、俺じゃなくてあっち」と指を差した。まだ白い鳥が、縮こまって震えていた。
新八が白い鳥を見つけた同時に玄関が勢いよく開いて、閉まった。ドタドタという足音が近づいてきて銀時と新八は襖のほうを見つめると、そんなところにいたネ、と不貞腐れたように頬を膨らまして、次はズカズカと畳を踏みしめて神楽が銀時へダイブした。潰れたような銀時の声とはしゃぐような神楽のこえの上に新八が、おかえり、と柔らかく言うと、神楽が至極嬉しそうな顔をして、ただいまヨ、と笑った。

「銀ちゃんずるいネ。あったかい畳を独り占めにしようなんて!」
「してねーよ。つかお前が勝手に外に行ったんだろーが」
「醜い言い訳は身を滅ぼすヨ、天パー」

そう言って神楽は下品に笑って、ソファで寝転がっていた定春を手招きして銀時の膝の上に乗っかり、側に来た定春の鼻を上を撫でた。
銀時は文句こそは言ってたものの神楽を振り落とすわけでもなく、神楽の頭に顎を乗せて、あーやらうーやら唸っているだけだった。
その様子を見て新八はひどくしあわせそうに小さく笑い、立ち上がってベランダに出た。洗濯物が揺れている先に、白い鳥が飛んでいくのが見えて新八はそれを見送った。

「あの鳥、どっかいったか」

と銀時の声がしたので新八が振り返ると目があって、新八は頷いて「そうみたいです。綺麗でしたよ、羽。銀さんの髪の色に似てました」と言うと、銀時は眉を寄せた。
やっぱり夢の内容を思い出さなければならない気がするのだ。それはどうしてか分からないけど、どうしてかそう思った。
そんな銀時を横目に新八は笑って、きっとあったかいから寝てただけですよ、と洗濯をまとめはじめた。
それに銀時は欠伸をして畳のあたたかさに目を閉じ、あったかいもんな、と返事をした。




な は な い



作品名:なはない 作家名:水乃