【APH】ただの日課です。【諾+氷】
――正確に言うと、触れようとしてもするりと指の間を摺り抜けていくその髪の持ち主が、大好きだった。
「お兄ちゃん!」
自分に向けて小さな手を伸ばしてくる弟が、酷く愛おしくて。
ひょいと抱き上げると、花のように綺麗に笑った。
嗚呼、月日とはなんと残酷なのだろうか。
成長した弟は、――弟は!
「・・・さっきから何を百面相してんの?意味わかんない」
――その名前の通り、すっかり冷たくなってしまっていた。
『なぁ』
「何、ノル兄」
『お兄ちゃんて呼べ』
「嫌」
こんな会話を1日に何度も繰り返して、最終的には弟が怒り出す。
それが私らの“普通”で、弟が昔のように素直になるまで、いつまでも続く日常だ。
「・・・いや、続かなくていいんだけど」
作品名:【APH】ただの日課です。【諾+氷】 作家名:鈴原玲音