ああ、あなたはわたくしの絶望と希望
おまえ無謀なんじゃねぇの。
幾度も忠告したけれど、終ぞフレンが頷くことはなかった。対抗するように、フレンからの騎士団への復帰も拒み続けた。どこまでやれるのか、眺めていたかった。届かなくていいから。決して気づかれない、彼がちいさく見える距離からでよかったのだ。
いつだってさよならをいう準備をしていたつもりだったのに。
フレンは子どもの頃からの変わらない笑みをユーリに向け続けるのだ。旅を始めたときも、ギルドを始めると言ったときも、人を殺してしまったこと、そしてそれを罪だとおもっていないこと(そう、おもっていないことが罪なのだとおもっている)を知られたときも。ユーリもフレンも立場も過ごしてきた日々も違うのに、それはユーリがフレンをどうおもっているか悟ったときから、自分の気持ちが何も変わっていないことを思い知らせる。ユーリによってはただの呪いだった。
「ユーリ」
「ほら、部下が呼んでんだろ。いつまでも騎士団長がこんな奴と一緒にいんじゃねぇよ」
「ユーリ、…僕は」
「いいから。…もう」
それならばもう本当に、いっそ届かないと諦められるぐらいまで。
「さっさとどこにでもいっちまえ」
作品名:ああ、あなたはわたくしの絶望と希望 作家名:きみしま