鏡
組敷いた啓介の白い頬を掌でそっとなぞりながら、隼人は呟いた。それを受けて啓介はクスクスと唇に妖しく弧を描き、肩で笑う。
「俺が綺麗?」
「あぁ」
「俺は汚いよ」
笑みを絶やさぬまま瞳をわずかに細め、血の気の低い唇は自分自身を蔑んだ。
「左目は見えないし、右腕は無い。肌の色だって気色の悪い青さだし、性格は歪んでる。どこをとったって綺麗なんかじゃないの、俺は」
しかし隼人は首を横に振った。
「ケイの右目はガラスみたいに綺麗だ、俺はケイの左手を触るのが好きだ、ケイの肌は絹みたいだ。それに俺は、本当のケイを知ってる」
「本当の俺?」
ほんの僅かに、啓介の表情に憂いが浮かぶ。
「ケイは綺麗だ、俺が言うんだから間違いない」
そう言って、隼人は静かに啓介の唇に口づけた。優しく触れるだけの口づけ。
啓介は瞳をぼんやりと開いたまま、左腕をそっと隼人の背に回した。
(本当の、僕?)