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こわいろ

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がしゃん、とおとがしてカップを落としたことに気付く。どろ、と液体が自分のズボンにしみていく感触を感じて、どの辺にカップが落ちたのかしる。俺は真っ青になってごめん新羅とつぶやく。声のふるえが鼓膜を伝わって、自分はこの、目の前の男を恐れているのだと知る。
表情が見えないとよく知ってる相手でも怖く思える。万が一おこっていたらどうしよう、と思う。その表情がわからないから、どう返したらいいかわからない。
「いいよ、臨也。僕が拾うから。」
すわってて、いいんだよ。と新羅はやさしくさとした。
そのとき、声が表情に変わって、ああ、新羅は今とても優しい顔で俺を安心させようとしてくれている、と感じた。表情がはっきりと浮かんで俺はやっとほほえむことができる。
「悪いね。」
「いいよ。友達だろ?」
俺は自分ではっきりとわかるほど顔が赤くなった。ぽかぽかとしてくる。
目が見えなくて気付くことが多すぎる。そのことに最近俺は気付きはじめている。

そのときふと、シズちゃんにとても会いたいような気持ちになった。
作品名:こわいろ 作家名:桜香湖