あらたないのち
「へ?」
今日の夕飯の話をするように、さらっと言われた言葉。
あまりにも普通のテンションで言われたため、正臣は思わず間の抜けた声を出した。
身に覚えがありすぎる結果に、正臣は「そっか」と答えるしかなかった。
「どうしよっか?」
「どうって…」
とても人一人の命の話をしてるようには聞こえない。
そんな口調で沙樹は正臣に問いかけた。
「子供、どうしよ?臨也さんに相談する?」
「いや、そこで臨也さんはおかしいだろ。てか沙樹はどうしたいんだよ」
「んー…まだ実感がないからなー」
そう言って沙樹はくすくすと笑う。
本当に実感がないのだろう。
他人事のように話す沙樹を、正臣は抱き寄せた。
「あのな、こうなったら時間との戦い。どうするか早く決めないと、決めることも出来なくなるぞ?」
「そっか、じゃあ産もうかな」
「じゃあって…」
人生に関わる問題をあっさりと決断する沙樹。
そんな沙樹の言葉に、正臣はふと一つのことに気がついた。
「…沙樹、まさかこれって、誘導尋問的なアレ?」
「えー、違うよー」
クスクス笑いながら、沙樹は正臣の問いに答える。
最後の決断は彼女自身が、けれどそれまでの過程は正臣も、そうして二人で決めた結果になるような流れだ。
だから、きっと今後もこのことに関して揉め事は起こらないだろう。
「正臣は子供、嫌い?」
「沙樹に似た女の子だったら好き」
「私は正臣に似た男の子だったら嬉しいな」
そんなことを話ながら、正臣は沙樹のお腹を優しく撫でた。