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はにかむ

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「藤君は僕のこと怖くないの?」
と。いつものように保健室を訪れた俺に。
白衣のあいつが声をかけてきたのは、鏑木のことがあった次の日だった。
まだほんの短い期間ではあるけれど、既に馴染んだ空気、空間。
確かに昨日のことに疑問や興味が全く無いと言ったら嘘になる、が。別に。そう。別に。
「別に」
俺は思ったままを口にした。
この会話を早々に終わらせて、目の前の保健室での俺の指定になりつつあるベッドに潜り込み、読みかけのマンガを読みたかったからだ。
ただそれだけだったというのに。
「ありがとう」
藤くんに嫌われてないようでうれしいよ、と口にしたあいつの表情は、僅かにはにかんだように崩れて。
じり、とした。何かが這いあがってくるような沸き上がってくるような。
膝の裏の辺りがひくりと痙攣したような。
それ以外の表現は思い浮かばない、微妙な居心地の悪さに俺は唇を噛んだ。
そういえばもしかしたら、今日最初に話しかけてきたときは不安そうな表情をしていたかもしれないなどと思い至る。
それが今は安心したような顔になっている。
生徒達に嫌遠されがちなハデス先生、は。
俺に嫌われていないか怖がられていないか、なんかを酷く気にしていたということだ。
「子守歌でも歌ってあげるよ」
居心地の悪いまま逃げるようにベッドに潜り込んだ俺に対して、追いかけてくるように仕切のカーテンが揺れる。
「い、いらねえっ」
「・・・そう?残念だな」
そのままカーテンが開かれることはなかった。
「何かあったら呼んでね」
と。正に飴十割の声が聞こえた後は静かになった。
なのに何かがおかしい。
ベッドに潜ったまま動揺している俺がいた。
何、に動揺しているのか。
自分でも理解できないままにそれを理解してしまうことも恐ろしいような気がして。
俺は外界を遮断するように、深く深くシーツの中に潜り込んだ。

(2010,03,01)
作品名:はにかむ 作家名:しの