【腐向けAPH】恋物語に句点(ピリオド)を打つ【露立】
「ねぇ、君はどうして――」
触れようとした髪はまた跳ねて、僕の指のあいだを摺り抜ける。
「どうして、僕を置いていくの・・・?」
振り向いた君は、頬に伝う涙を拭おうともせずに静かに笑っていた。
『・・・それは、貴方が一番良く判ってる筈です』
それだけ言って駆け出す君を抱きしめたくて、謝りたくて。
でも、僕の体はセメントでその場に固められたみたいに、一歩も動こうとはしなかった。
――ただ唇だけが、冷えた空気を震わせて。
「僕が君を、傷つけたから」
懺悔にも似た呟きは閉じられた扉に吸い込まれて、もう君には届かない。
いつの間にか頬を伝っていた温かい感触だけが、僕の感覚の全てだった。
作品名:【腐向けAPH】恋物語に句点(ピリオド)を打つ【露立】 作家名:鈴原玲音