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NeverMore7

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「陽介!?」

反射的に竹刀をつかみ、調理室を飛び出す。
左右に視線を走らせれば、廊下の端に、黒い固まりが蠢くのが見えた。

「離せこのっ!!ふざけんな!!」

波打つ影の中から、陽介の声が響く。

「陽介!」

全力で走り寄ると、竹刀を振り降ろした。
手応えなく散る影の中に、陽介の姿が見える。

「相棒!」
「手を伸ばせ!!早く!!」

影の薄くなった部分を狙って、陽介が手を突きだしてきた。
その手をつかもうとした瞬間、指先に影が絡みつく。

「!?しまっ!」

振りほどく間もないほど素早く、影は全身を覆っていった。

「先輩!!」
「青葉君!!」
「センセイ!今助けるクマ!!」

後ろから、皆の声が聞こえる。
陽介が、必死に影を散らしながら、

「相棒!つかまれ!!」

伸ばしてくる手を取ろうとして、


『ダメだよ、アキくん。一緒に連れて行かれちゃうよ?』


その声に、動きを止めた。


この手を取れば、陽介も捕まってしまう。
それは出来ない。
そんなことは、してはいけない。


ぐっと体を引っ張られる感覚に、膝が折れた。
伸ばされた手が、空をつかむのが見える。


これでいい。陽介を巻き込まずにすんだから。


影に視界を塞がれ、暗闇に包まれたその時、

「させるかよ!」

陽介の声と、何かが体当たりする衝撃を感じた。






クス・・・

クスクス・・・

ふふふ・・・


誰かの笑い声が、さざ波のように聞こえる。
背中に当たる、冷たく硬い感触に顔をしかめながら、目を開けた。

ぼんやりとした光と漂う霧以外、目に入るものはない。
微かなうめき声が聞こえ、慌てて目をやれば、陽介がうずくまって腰をさすっていた。

「陽介っ、大丈夫か?」
「・・・モロに腰打った。赤ちゃん出来なくなったらどうすんだ」
「完二に責任取ってもらえ」

立ち上がり、周囲を見回すも、霧に遮られて視界が利かない。

「参ったな。陽介、眼鏡持ってきてるか?」
「持ってねーよ。あれ以来、霧は出てねえし」

陽介の言葉に頷き、先ほど聞こえた笑い声は、どの方角だったろうかと、辺りを見回していたら、

「うりゃあああああああ!!!」

いきなり陽介が殴りかかってきたので、身をかわして避けた。

「何すんだよ、いきなり!」
「何じゃねーよ!お前、さっき手を伸ばすのやめただろ!!俺を巻き込むからとか、なんか、そんなくだらないこと考えただろ!!ふざけんじゃねーよ!!」
「なっ!ふざけてんのは陽介だろ!!みんなと合流して、助けに来るなりなんなりすればいいのに!!巻き込まれてどうすんだよ!!」
「うっせー!!目の前でお前が捕まってんのに、見捨てられるかよ!!」
「だから!見捨てるとかじゃなくて!!」


『ねえ、一緒に遊ぼ?』


突然響いた声に、お互い口をつぐむ。
声の方に目をやれば、徐々に霧が晴れていき、人影が浮かび上がった。

「菜々子ちゃん!!」
「りせ!!直斗!!大丈夫か!?」

椅子に座っている菜々子ちゃんと、床に座るりせと直斗。三人とも、何故かドレスを着ている。
呼びかけにも反応せず、三人は視点の定まらない瞳で、宙を見つめていた。

その後ろに立つ、ワンピースの少女。

「ねえ、アキ君、遊ぼ?」
「え?何・・・」

問いかけの途中で、突然少女の足下から影が溢れだし、こちらに迫ってくる。

「!?」
「ちょ!!何だよ!!!」
「うふふ・・・あははは!!ねえ、遊ぼうよ!!遊ぼう!!」

襲いかかってくる影に、竹刀を叩きつけた。
だが、一瞬散らばった後、また集まり、こちらに迫ってくる。

「ぎゃーーーー!!やめろ!こっちくんな!!」

陽介が叫び声をあげながら、両手を振り回した。
手に持ったスパナは、確実に影を捕らえるものの、ダメージを与える様子はない。

「陽介!ペルソナ出せ!本体を攻撃するんだ!!」
「おう!って、え?本体?」

お互い、無言で少女に視線を向けた。

「お、鬼!悪魔!!お前、人間じゃねえ!!」
「うるっさいな!!他に手があんのかよ!!」
「やだ!!出来ない!!お前がやればいいだろ!!」
「出来ないから言ってんだよ!!いいからやれ!!」
「ぎゃー!!鬼だ!!親友だと思ってたのに!!」
「やかましい!!豆腐ぶつけんぞ!!」
「何で豆腐!?」
「ねえ、私とも遊んで?」

瞬間、影に体をなぎ払われ、地面に叩きつけられる。
衝撃に目が眩み、息苦しさに体を折り曲げた。

「かはっ!くっ・・・」
「相棒!」

駆け寄ろうとする陽介の体に、影がまとわりつく。

「アキくん、遊ぼ?」
「うわっ!ちょ!!何すんだ!!」

じたばたと暴れる陽介を持ち上げ、勢いよく投げつけてきた。

「うぎゃあああああああああ!!」
「うわっ!!」

間一髪、横に転がって避けると、陽介は、派手に転がっていく。

「おい、大丈・・・!?」

陽介に声を掛ける間もなく、今度は、菜々子ちゃんが投げつけられてきた。
危ういところを抱き止めるが、反動で背中を強かに打ちつけてしまう。

「くぁっ!げほっ!!」
「相棒、大丈夫か!?って、何で俺のことは避けるんだよ!!」
「当たり前だろ!!お前なんか受け止められっか!!骨が折れたらどうすんだ!!」
「そこはあれだ!俺らの友情パワーで!!」
「お前、テレビ見すぎ!!無茶言うな!!」
「アキくんは、別のお人形がいいの?」

少女の声とともに、影は、りせと直斗の体を持ち上げた。

「いや、ちょ、それは・・・」
「受け止めろ、相棒!愛のパワーで!」
「無茶言うな!!」
「お前、女の子を床に落とす気かよ!?マジで鬼だ!!」
「んなこと言ったって、菜々子ちゃんとは訳が・・・!?」
「あなたには、こっちをあげる」

直後、りせの体が陽介めがけて降ってくる。

「ぎゃあああああああああああ!!」


めきごしゃっ!!


・・・避けずに受け止めたのは、えらいと思うぞ。うん。


「ほら、こっちも」

影が、直斗の体を高く持ち上あげた時、

「ジライヤ!!」

陽介のペルソナ、ジライヤが、少女に向かって雷を放った。
小さな体が閃光に包まれ、直斗を絡め取っていた影が、力なく床に落ちる。


・・・・・・・・・。


「わー、菜々子ちゃーん、あのお兄ちゃん怖いねー」
「ちょっ!?待てこら!!お前がやれって言ったんじゃねーか!!」
「言ってない」
「嘘つけーーーーー!!確かに言ったぞ!!『本体を攻撃しろ』って!!」
「はあ・・・酷いお兄ちゃんだねえ。俺に濡れ衣を着せようとしてるよ。自分でやったのにねえ」
「いちいち菜々子ちゃんに話しかけんな!!地味に傷つく・・・!?」

わめく陽介の体に、影がまとわりつく。

「陽介!」
「相棒!!危ねえ!!」

陽介に気を取られた瞬間、横から影が覆い被さってきた。
とっさに、菜々子ちゃんを放り投げる。

「相棒!!」

暗闇に包まれながら、陽介の声が聞こえた。
応えようにも、口を塞がれてしまう。

「くそっ!相棒を離せ!!」

陽介の声。一瞬影が薄くなるが、すぐにまた暗闇が戻ってきた。
振り払おうとしても、体の自由が利かない中、

『嘘つき』

首筋に、ひやりとした感触。
作品名:NeverMore7 作家名:シャオ