きみがすき
家に帰ると双子がいました。本当迷惑。本当空気読め。中学どうした、ときくと、今日はもうお休み!といわれました。そんな明るくいわれても困るんですけど。
シズちゃんは俺の妹たちをみて呆然としていた。それはすごく面白かったから、まぁいいか、という気分になった。シズちゃんは妹たちに囲まれて困ったように笑う。まぁ、俺の妹ですから、すごくかわいいのは当たり前ってことで。それにしてもでれでれしちゃってまぁ、とだんだんいらいらしてきました。なんだこの疎外感。あいつとつきあってんのは俺なんだぞ。俺をほっとくなよ。
「ねぇ、シズちゃんこっちきて。」
俺は怪訝な顔で近づいてくるシズちゃんにこっそり「俺の寝室鍵かかるから、そっちに行こう。」てちゃんと言った。言ってやったんだよ?
そしたらシズちゃんは大まじめに
「妹たちにばれたらどうするんだよ。兄としてだめだろ。」
と言ってくれたわけです。そうでした。こいつすっごいブラコンで、兄なのだった。そんな当たり前でしょ、みたいな顔でいわれても困ります。俺は本当にこの妹たちの本性を君に教えてやりたい、と切に思った。そうすればそんなセリフはでてこないはずだ。
自然な流れで、この最悪な妹たちと恋人であるシズちゃんと俺、はご飯を一緒にいただくことになりました。
「何、インスタントじゃだめなの。面倒じゃん。」
「イザ兄料理上手でしょーーー」
「期(私兄さんの料理たべたい)」
俺は困ってシズちゃんのほうをみる。シズちゃんはきょとんとして訊いてきた。
「何、お前料理できんの。」
すげぇな。
あっけらかんと笑ったその顔に俺は耳まで赤くなるのが自分でわかった。えぇぇ、そこでデレるの。ていうか本当に天然?普通にかわいい!!!!
俺は顔を必死でかくしていった。
「つくる、けど、何がいい?」
「「ハンバーグ!」」
妹たちは口をそろえていうので、俺は目で『お前たちにはきいてない!!』と告げるのだが、少しまったあとで、シズちゃんが
「いいな。ハンバーグ。」
俺もたべたかったんだ、といったので、うちの妹たちまでときめいた顔でシズちゃんをみるようになってしまうのだった。やさしいこって。俺以外には。
まったく不愉快極まりない。あとで覚えとけよ。と思いながら厨房にたつ。
「臨也、」
なに、俺はちょっと不機嫌に返答する。
するとシズちゃんのため息が聞こえる。大きなため息に、さすがにそっけなかったかな、と反省する。でも、さびしくさせるから悪いんだ、と俺はじゃがいもの皮をむく。いそいそと、気をまぎらわせる手段のように。
しばらくすると、足音がきこえはじめた。近付く足音に少し期待する俺。心臓の音がおおきくなって、やがて包丁の動きがとまった。
「なんか手伝うか。」
後ろからちょっと抱きすくめられた。
俺はちょっとだけ笑顔になる。考えていることはまるですれちがっているわけじゃない。
「どうしたの、シズちゃん。さびしくなった?」
まってて。俺はそっと囁くと、後ろで頭がひとつゆれた。肯定だろうか、この場合。