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とおまわり

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「ねぇ、新羅、シズちゃんの童貞を治してあげたい。」
そんなことをいわれましても。新羅はこういうとき正直にそれを口にだすから俺は新羅のこと大好き。
「君たち本当に最近仲いいね、俺にくらいははなしてくれてもいいんじゃないの?」
「だめだよ、秘密にするって約束だから。」
それは暗に『つきあってます』といっているようなものだった。俺は昔から新羅のことが大好きだ。もちろん、それは仲のいい友達、というレベルで。悪いことをする友達というのはこういうやつじゃなきゃつまらない。
「ホテルにでもつれこんじゃえばいいじゃない。」
「だめだよ。シズちゃんああいうところきらいだもん、絶対。」
難しいよねぇ。と俺はつめをかんだ。キスはした。なのに、なぜかその先にはいたらないままもう何か月も過ぎようとしている。
シズちゃんは何か、恋愛というものに夢をもっているような気がしてならない。そういうところが俺は好きだし、こういう関係を続けていくのももしかしたら何年かしたら楽しくなるかもしれない、と思う。だけど、残念ながら俺もシズちゃんも高校生で、つまり、そういうこともしてみたいお年頃なのだ。
特に俺は、快楽主義で、即物的な人間だから、欲望にあらがえない。好きな人がいるならセックスすべき、と考えるのが俺の恋愛観であり、その対象が今、シズちゃんなのだから、シズちゃんが童貞である、というのは危機だ。今すぐ解決すべき状況だ。
「ラブホテルか。」
「真剣にそんなこといわないでよ。女子もいるんだから自重して。」
「うん、そう、だよね。俺最近おかしい。シズちゃんが格好よすぎて変になりそうだ。」
だからね、臨也。
新羅がまた説教をはじめそうになったから俺は思考を別に移すことにした。ホテルにつれこむってのはたしかにいい考えかもしれない。多少荒療治でも、このままではいられないのは確かだ。シズちゃんだって、男なのだから、ホテルですることに興味がないことはないはず。いや、あるだろう。
そこで思い出したことだが、俺もホテルでする、ていうのは初めてだった。
妹たちは俺が女をつれこんだときはからかいつつも外へ出ていってくれた。しかし、まさか妹たちに男の恋人を紹介するわけにいかず、機会をのがすことが多かった俺は、家ですることをなかば諦めている。最近妹たちが家にいることが多い。すでに別居しているはずなのになぜだ、という感じだ。もしかして感づかれているのではないか、と思うが、さすがに男同士、というところまで考えが及ぶわけがなかろう、と思う。というかそうであってほしい。あれらにまだそんな希望をいだいている自分に驚きだった。

シズちゃんのうなじが見える。そんな席にすわっている自分がいやだった。ときどきそっと触れてみると、ちょっとこっちを見るけど、とくには制止するわけでもなくて、授業中にさわぎだしたりしないのがちょっとつまらない。知っているのかもしれない。俺がこうしてうなじに触れている理由を。それなら絶対に殺してやりたい。俺は死にそうだ。なにも俺をこの思考から逃れさせてはくれない。
あの頃ほど、俺が誰かに好きと伝えようとして努力した日々はなかっただろう。シズちゃんは俺の言葉をきかないし。俺がどういう言葉で伝えればこの気持ちや、衝動を知ってもらえるのか、さっぱりわからなかった。
ある日、そっと、背中に『すき』と書いた。それから、何女みたいなことしてんだ、と俺はかなり赤くなって、手をひっこめた。くやしいなぁ、翻弄されるだけだ。
「なぁ、お前今何か書いた?」
「…はやくしんでよシズちゃん。」
ちがう。そんなこというな。
はやく気付けよ。と、俺はいいたかった。言葉は裏腹だ。照れ隠しの言葉は完ぺきすぎて、本当の気持ちがこれっぽっちも伝わりはしない。

俺はずっと、授業中外を見ていた。彼の体をみるだけで、哀しいほどにいとしくなる。それに耐えられなかった。「授業きけよ。」とドタちんくらいならいうかもしれないけど、シズちゃんは俺をほったらかしにするから、俺はそれもまたさびしい。
中学生が一緒に帰っている。カップルもいるので、興味深げにみていると、彼らはどこか恥じらいながらも手をつないだり、しぼりだすように会話している。うらやましいなぁ。今、この瞬間、手をつないだり、キスをしたり、こっそり教室をぬけだしてエッチなこともしたい。シズちゃんが、必死になって俺を求める姿がみたいんだよ。それはたとえラブホテルでもいい。俺はそのほうが興奮するな。
ひととできないことをしてみたいんだよ。

外の風は十分に冷たかったのに、俺の脳みそは沸いているかのように機能していなくて、俺はずっと、シズちゃんのことだけを考えていた。
作品名:とおまわり 作家名:桜香湖