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Zahn und Kind und Erwachsener?

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Zahn und Kind und Erwachsener?


ようやく仕事が終わった。
屋敷に帰るのは3日ぶり。
弟に会えることを考えると、疲れた足取りがスキップしそうになる。
鼻歌まで歌いたくなる。
家に着き、そんなご機嫌の様子のまま玄関の扉を開けた。
「ルッツー!ただいまー♪」
すぐに小さな足音が聞こえてくる。
「兄さん!!」
むぎゅっと抱きついてきた。
かわいいぃいいぃぃい!!と悶えるのを必死でこらえ、「いい子にしてたか?」と聞く。
すぐにうん!と返事が返ってきた。
「ちゃんと早寝早起きしたし、勉強もしたよ」
にこっと笑う。

いつもなら「えらいぞ!さすが俺様の弟!!」と言って、ぎゅっと抱きしめられるのだが、今回は沈黙が流れた。
?と、首をかしげる。
ギルベルトは先ほどの「いい子にしてたか?」と聞いた状態から少しも動いていなかった。
笑顔のまま固まっていた。
「兄さん?」と声をかけると、はっと気がついた様子で、そして顔をこわばらせた。
「…ルッツ。いー…ってしてみろ」
??と思いながらも、口を「い」の形にする。
「い―――――…ひぃ!?」
急に肩を掴まれてびっくりした。
顔を見ると蒼くなって目を白黒させ、まるで混乱に陥っているようだ。
いや、すでに陥っていた。
「ル…ルっル、ルッツ…おお前はは、は…」
壊れかけのラジオのように言葉を続ける。
「歯歯歯歯どどどうしたんだよ―――――――――!!」





――― 一昨日までさかのぼる。――――――――――――――――――



朝ごはんを食べている時、なんだか歯が頼りない気がした。
兄に「よく噛んでたくさん食べろよ」と言われてから、いつもしっかりと噛んでいる。
丈夫になるために牛乳もしっかりと飲んでいるのにどうしてだろう…と思いながら、指でその気になる歯をつついてみると、少し動いた。
ぐらついている。
びっくりした。
遅れてさぁーっと蒼くなった。
どうしよう…。
歯は一度傷めると治らないはず。
『歯は大事にしろよ。しっかりと磨け!』という兄との約束を守れなかったと考えていると涙が出てきた。
だけど、少しでも早く行動したら、マシになるかもしれない。
そう思って誰かに聴くべく、部屋から出た。



とことこと小さな足音が聞こえてくる。
この屋敷に仕えるコックやメイド、執事は、よっぽどなことが起こらない限り、走ったりはしない。
となると、あのお方しかいない、と思って振り返る。
案の定、ルートヴィッヒだった。
「おはようございます。ルートヴィッヒ様」
走ってきたルートヴィッヒは落ち着きがない。
しかしそれでも、「あっ…うん、おはようございます」と小さな声で言う。
どんなにあわてていても挨拶はしっかりと返してくる。
あの人(ギルベルト)は見かけによらず、こういうところがしっかりとされていますからね。
そんなことを思いながら、そしてどうしてあわてていたのか気になり、尋ねる。
「どうしたのですか?」
今にも泣きそうに、ふるえながら答えが返ってきた。
「…あのね。歯がグラグラするんだ…」
そして、ギュッと目を瞑る。
「しっかりと磨いてるし牛乳も飲んでいるのに、朝起きたらこうなっていたんだ…」
なんでだろう…と泣きそうなルートヴィッヒ。
それを見て微笑みながら執事は言った。
「ルートヴィッヒ様。それは良いことなんですよ。一つ大人に近づいたという証拠です」
…え?と、思いもしない言葉を受け、どういうことなんだろうと思う。
「今ぐらついている歯は子供の歯で、それが抜けた後、大人の歯が生えてくるんですよ」
「そうなの!?」
驚きと期待で目を輝かせて聴いてくる。
ええ、と執事は続ける。
「なのでそれは抜けてもよい歯なのです。そのうちにどんどん歯が生え換わってきますよ」
そうなんだ、やったー!ありがとう!!と、満面の笑みで言って、残りの朝食を食べるために、とてとてと走っていくルートヴィッヒ。
それをほほえましく思いながら、執事も自分の仕事へと戻った。







それからなんだかんだあって歯が抜けた。
しかし、そんなことは兄は知らない。
自分もそんな時期があったはずなのに、すっかりとんでいる。
ふるえながら「ルッツの歯…ルッツの歯が…!!うああああっ…!!!」と暴走していた。
「に、兄さん!!」
なんとか落ち着いてもらおうと声をかけるが、半狂乱状態の兄の耳にはとどかない。
「ルッツ!誰かに殴られたのか!?そいつを俺が抹殺してきてやるから!!それとも机に歯をぶつけたのか!?それなら俺がその机を斧でぶった切って燃やしてやる!!」
本気で今にも誰かを殺りそうな眼で問うてくる。
「兄さん!これ、自然に抜けたんだ!血は少し出たけど、全く痛くなかったよ!この後、大人の歯が生えてくるんだって!!」
遮られる前に、一気に言う。
言った途端、兄は静かになった。
ポカーンとだらしなく口を開けている。
「へ?…大人の歯??」
言われてしばらくしてから思い出した。
そうだ、自分も昔、歯が抜けて驚いたっけ…と。
「…あぁ。そ、そうだったのか」
それを聞いて、どうやら落ち着いたようだとルートヴィッヒは判断した。
「うん、だからとても嬉しいんだ!!また一歩大きくなったってことでしょ?」
にこにこするルートヴィッヒに微笑んでギルベルトは答えた。
「おお。そういうことだな」
そう言いながら少し、それを寂しくも思った。
しかし、やったー!と喜んでいるルートヴィッヒを見るとそんな思いも吹っ飛んで、ただただかわいすぎるっ…!!と悶えていた。





――――――おまけ―――――――――――――――



「ルッツ。丈夫な歯が生えてくるように、おまじないするか?」
「する!!」
「よし。じゃあ、ネズミがいそうな屋根裏や縁の下に抜けた歯を投げるんだ。ネズミの歯みたいな丈夫な歯が生えますようにって」
「うん!わかった!!」
ぱたぱたと駆けていくルートヴィッヒをにこにこと見守るようについて行った。



Ende.

その場のテンションで書きました。…読み直してないです。
タイトルは思いつかなかったので、とりあえずドイツ語にしてみました!
日本語にすると『歯と子供と大人?』です。適当さがばればれです。
おまけ以降のおまじないは、ドイツから伝わったという話があります。
信憑性が20%しかありませんが(=v=;)
作品名:Zahn und Kind und Erwachsener? 作家名:沙木