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あいのことば

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「送る。」
俺はその言葉にかなりぞっとした。つきあって、て言ってしばらくの沈黙のあとだった。殴られない雰囲気だなぁ、と安堵し、さすがに俺たちそんな間柄にはなれないよね、とがっかりしたりしていた頃あいにそんな言葉をもらってしまったのだ。シズちゃんの顔を俺は見られなかった。俺、ふられたことになってんのかな。もしかして、それで気をつかってくれてんのかな、なんて。
夕日の綺麗な日で、シズちゃんの金髪を横目でみていた。きらきらして綺麗だな。夕日に負けないぐらい、俺はその髪が好きだった。乱暴だけど、やさしくて、こうやって気のつかいかた少し間違えてるところがときどきすごくかわいいと思ってた。
俺以上にシズちゃんのいいところ知っているやつなんていない。
『もったいないよ。気付いてよ。』
こらえようもなく哀しかった。たぶん、自分の家につくと、明日からはそういう目で見ることさえ許されないのだ。ずっと抱いていた彼への憧憬をどこへしまったらいいのかもわからない。
「なぁ、お前の家、どっちだっけ。」
初めて静ちゃんが口をひらいた。そして、俺のほうに目線を向けた。それも初めてで、俺は動揺した。瞳の位置が定まらない。
シズちゃんの瞳はゆれなくて、じっと俺をみて、ため息をついた。
「別につきあわないなんて言ってない。」
俺はは、とした。シズちゃんなんかに心を読まれたというのか。
「混乱してる。お前は俺を嫌いだと思ってたから。」
「シズちゃん、は、俺のこと嫌いでしょ?」
シズちゃんに言葉はなかった。無理にひきだそうとすると俺がないてしまいそうだ。
俺はゆるくシズちゃんの大きな手をにぎる。握り返してこなかったらあきらめようと思った。あきらめる口実を作るための儀式だった。
だけど、シズちゃんは俺の、静ちゃんにくらべたら小さすぎる手をぎゅ、と握り返すのだ。好きになるだろ、普通。馬鹿なんじゃないの。
俺はもっと混乱してる。ふられたことにじゃなく、この男の行動が、いちいち俺の心を震わせるから。

ねぇ。俺はおもむろに呼びかける。もうすぐ家だ。だからそれまでにもう一度ためしてみたいと思って口を開く。
「ねぇ、シズちゃん、すきなんだけど。」
シズちゃんは、とききかけて言葉を失う。
そむけた顔がほんのり赤くて、俺は次に紡ぐべき言葉を完全に見失う。

そしてそれが肯定の意思表示であることに気付くのだ。
作品名:あいのことば 作家名:桜香湖