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非日常に堕ちるということ

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少年は、日常が「退屈」だと思った。
だからこそ、非日常を求めた。
池袋に来てからは非日常の連続だった。

親友との再会、出会い
首なしライダー
そして、ダラーズ…

この1年間は瞬く間に過ぎさったが、決して楽しいことばかりではなかった。


『親友は黄巾賊のリーダーであり、自分の前から姿を消した。』


自分が求めていた非日常とは一体なんだったのだろう。
虚無感だけが胸を支配し、少年の心を締め付ける。


「正臣…今頃どうしているんだろう」

ふと、竜ヶ峰帝人は呟いた。
池袋という人で溢れる雑踏の中、少年の声はかき消されてしまい、誰にも聞こえなかったように思われた。
だが、その少年の呟きを確実に、まるで狙い澄ましたかのように聞き取った者が一人。

「本当に紀田君は何処に行ったんだろうね。実に寂しいよ。君もそう思うよね、帝人君?」

ふと呟いた言葉に反応が返ってくるとは思わず、少年は驚きながら後ろを振り返った。
そこには、親友が「絶対に近づいてはならない」と警告した人物である、折原臨也が立っていた。

「…折原さんじゃないですか!どうしてここに…!?」
「臨也で良いよ、知らない仲じゃないんだし」

眉目秀麗な青年がにっこりと微笑んだ。
男である帝人が思わず見惚れてしまう程、その笑顔は美しく、優しかった。
まるで、帝人の警戒心を解こうとしているような。

「…えっと、臨也、さん」
「うん、よろしい。君は素直だね」
「…そんなことはないですよ。ところで、何で池袋にいるんですか?」
「帝人君に会いに来た、って言ったら君は信じるかな」

先程見せた笑顔と同じく、にっこりと折原臨也は微笑んだ。

「紀田君がいきなりいなくなってしまって、帝人君も災難だったねえ。紀田君のことはさ、結構目を掛けてたから心配してるんだよ、これでも。そして親友であった君のこともね。…俺に出来ることがあったら何かしたいな、と思って。」

折原臨也が、紀田正臣に何をしてきたかを知っている者からしたら、反吐が出るような台詞に違いない。
…だが、帝人はその事実を「知らなかった」。そのため、帝人からしたら、臨也が本当に正臣のことを心配してるように「見えてしまった」。


「…臨也さんの情報網をもってしても、正臣の居場所は分かりませんか」
「うーん…出来るだけのことはしているんだけどねえ、まあ、全く情報を掴んでいないといったら嘘になるかな」
「ほんとですか!?」
「うん、本当だよ」

にこり。
今度は表情には出さず、臨也は心の中で微笑んだ。

案外、ダラーズの創始者様も純粋なんだねえ?
駄目だよ、いきなり目の前に現れた男の言うことなんか信じちゃ。
良く言えば、純粋。悪く言えば、思慮が足りない。
まあ、そんな「人間」らしい君のことが俺は愛しくて愛しくて堪らないんだけれど。

折原臨也がこのようなことを考えているなど、少年はつゆ知らず、必死に縋りついてくる。

「正臣は…正臣は一体どこにいるんですか!?」
「それが、まだ場所までは分からなくてね。紀田君と仲の良かった君の力を借りれたらと思っているんだけれど…帝人君も手伝ってくれるかな?」
「はいっ…出来ることならなんでもしますよ!」

少年の必死さと心の隙を、折原臨也は利用する。


「じゃあ、取りあえず俺の事務所まで来てもらえるかな。情報交換といこうじゃないか」
「新宿ですよね…?はい、分かりました」


…ほら、落ちた。
にこり。
表面上は、爽やかで善人面した仮面をかぶりつつも、心の中では邪悪に、そして実に嬉しそうに微笑んだ。
これからのことを考えながら、臨也は帝人に向けて心の中で呟いた。


『非日常へ、ようこそ』


_____竜ヶ峰帝人は、折原臨也の歪んだ愛情という名の檻に足を踏み入れてしまったことをまだ知らない。
希望の活路を見出したかのように見えた少年の足取りは軽やかに進む。
だが、その先にある深い闇へと落ちていくことを知らずに。