願う心
今日は七夕。
織り姫と彦星が年に一度だけ会える日。
誰がそんなくだらない事を考えたのだろう
パソコンの明かりが光る暗い部屋の中で折原臨也は目を細めた。
画面の向こうの無数の記号。
ヘッドフォンから流れる不協和音に耳をすませる。
♪♪♪
「ちっ・・・何度やっても気に入らない」
奏でられる歌声は不快の極み
♪♪♪
臨也はオリジナルに敵うことのないと知っていながら彼を作り上げた。
奏でる
彼はただ歌うだけ。
奏でる
不快な音符の旋律を。
奏でる
心のない歌声を。
「・・・シズちゃん、シズちゃん・・・シズちゃんっ」
臨也は画面に向かって手を伸ばす
届かない彼は、硝子の向こう
折原臨也は願った。
そして叶った。
ただ一つの願い事
いつも、いつも願っていた
「シズちゃん・・・ねぇ?死んでよ」
そして、平和島静雄が消えた、2年前の今日・・・・・・
「・・・ねぇ、シズちゃん」
暗闇の中
光るその硝子の壁はとても厚くて臨也は額を擦りつける
「シズちゃ、ん・・・っ」
すっぽり空いた心の隙間をウィンドウの明かりだけが照らしていた。
神様なんて信じていない
でも・・・もう一度願いが叶うなら・・・願いを叶えてくれるなら・・・
どうか・・・神様・・・・
臨也の願いは空しく響く。
暗転の星空とその中に光る科学的な光だけが彼を照らしていた。
作品名:願う心 作家名:peso@ついった廃人