二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

be my last

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「名家の女には誰でも一回は焦がれるもんだからなぁ。」
同僚の言葉に一瞬思考が停止する。
そんなつまらないことを言われただけで、俺はまったく正常ではいられなかった。だから手がでました。と教官にいうといつもの呆れ顔で一言二言の注意を受けるだけにとどまった。それだけの女なんだろう、とも言われた気がする。
甘楽は、いい女かいやな女かといわれたら確実にいやな女だ。どれだけ家族が言っても結婚はしないし、そのくせ自分に気のある男は利用するだけ利用してあとでこっぴどく捨てるのだ。俺はああはなりたくないものだと思う。思いつつ、通っている自分はなんなのだ、とうすうすこの思いに気付きながら。
甘楽は俺がいない間は男といる時間が多い。別に甘楽が望んでやっていることではないのだが、たび重なる見合いのせいで自然とそうなってしまう。

「もうね、男ばっかりなの。みんな私のこと舐めまわすみたいに見てさ。だから私どうやって断ってやったら一番傷つくかな、てその人の話をききながら考えてる。」

甘楽は心底いやな女だった。
だけどそれだけだ。男といるという事実には不思議と腹がたつことがなかった。
それどころか、それを知っているからこそ、自分がくる時分にただ、何をするでもなく俺を待っているあいつの姿が俺は好きで、俺はうれしかった。
甘楽が男ともめるのを見たのは出会ったころの一度だけだった。
それ以来、甘楽が男ともめたりするのはおろか、彼女が家人以外の男と一緒にいることさえ見たことがない。

**

ある日、俺は士官学校が早くに終わったために、少しはやく折原の家についた。
いつもならば縁側で俺をまつ姿がなく、今日も男が家にいるのか、と頭の片隅で思った。今日もきっと断って、自分のところへくるだろう。
甘楽はおそらく誰とも結ばれるつもりがない。そういう確信があった俺はいつも余裕で、永遠にこんな時間が続くのだろう、と思っていた。
ぱたん、と障子のあく音がして、ああそろそろか、と壁にかかった西洋時計をのぞく。待ち合わせの時間まであと2分と少し。これで彼女の顔が見られる。
凛とした声で、彼女が見合いを断る言葉を聞く。
それはまるで静雄にとって告白のように響く。
だから結ばれなくてもいいと思ってしまった。不思議なものだ。
作品名:be my last 作家名:桜香湖