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苛々の原因

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最後の一文字は、俺の唇によって吸い込まれる。
相馬の目が大きく見開かれていたが、俺は見ない振りをして目を閉じる。
堪能するように深く、そして、少し舌を差し込んで虐めてやる。
時折くぐもった声が相馬の口の隙間から洩れ、その度に顔を赤らめて必死に耐えていた。
何度も繰り返してやると、少しずつ身体の力が抜けていくのか俺の制服の袖をぎゅっと震える手で握りしめていた。
流石にここまでするとやばいかと思い、漸くキスの嵐から解放してやる。

「はっ、ちょ、っと…!ここ、何処、だと思ってるの!?」

最後の方は一気に捲し立て、赤くなった顔を隠すように手で覆っている。
荒い呼吸を繰り返す相馬を見て、身体の奥から熱いものが押し寄せる感覚に襲われる。
そこで、最近こいつに触れていなかったことに気付く。

(もしかして、こいつ不足が苛立ちの原因か?)

そう言えば、最近お互い学業の忙しさやシフトのすれ違いで、触れるどころか会うことすらままならなかったような気がする。
そのせいで、あいつに近づく人間に嫉妬してしまうくらい、我慢の限界がきていたようだ。
元々は、相馬から想いを告げられ付き合うことを決めたのだが、何時の間にかこちらの方が彼に溺れていたのだろうかと自分に呆れてしまう。

「佐藤君、聞いてる!?」

抑え気味の声と見上げる目で、俺に抗議するこいつ。
未だに火照らせた顔と多少潤んでいる瞳に、理性がグラグラと崩れかけていく。

(ああ、俺はもう末期か…とりあえず、)

バイトが終わったら、こいつを連れて家に直行。
そう心に決めて、持っていたフライパンで軽く相馬の頭を叩いてやった。
作品名:苛々の原因 作家名:arit