にている
そうだ、お前もいつも笑ってる。
「山田、ひとつ気付いたことがあるんですが」
「おうそうかよかったな」
「佐藤さん山田まだ何も言ってません」
面倒くさいのが来た。
「あ、今面倒くさそうな顔しましたね!むきー」
「はいはいどうでもいいからとっとと話せ。んで仕事しろ」
えー、といかにも不満そうな山田。
一応言っておくが、俺は今調理の真っ最中。
そして山田は休憩時間外だ。
仕事しろ。
それでも話を聞いてやる俺はとんだお人よしだ。
そう思っていると、話していいと言われたことにやっと気付いた山田が話し出した。
「えーとですねえ」
そう言って山田は辺りを見回す。
……?何だ?店内のモノなのか?
「あ!」
と、どうやら目的のモノを見つけたようで。
佐藤さんあちらを見て下さいと言わんばかりに指を2、3回指した。
「ん?」
それは、モノ……ではなかった。
「轟と……相馬?」
山田の指の先では、今から休憩に入るはずの轟。
それと、また誰かに仕事を押し付けた(いや、あいつはやってくれたって言うんだろうが)のか、手持ち無沙汰そうな相馬。
そんな二人が話している光景があった。
(……なんか珍しい組み合わせだな。……で、)
「どっちだ?」
「え」
「轟か、相馬か」
「どっちもです!」
どっちも?
俺が首を傾げると同時に山田は話し始めた。
「轟さんと相馬さんって似ていると思いませんか?」
「……は?」
「雰囲気が似ているといいますか、なんか……どことなく似ていると山田は思うのですが」
「抽象的すぎねーか」
「だって山田お二人のどこが似ているのかはっきり分かりませんもん。なので佐藤さんに訊いてみようかなって」
「何で俺が……」
「お二人と近しい存在といえば佐藤さんですよ」
あー……なるほどな。
しかし唐突にそんなことを訊かれても二人を似ているなんて思ったことがないから分から……
「……あ」
分かった。あった。二人の共通点。
「あいつらいつも笑ってるところが似てるんじゃねえか?」
「……あ!そうですねお二人いつも笑顔ですね!山田大発見」
「いや、見つけたの俺だからな」
「いえ、言ってしまったもの勝ちの法則で山田の発見です」
「はいはい、分かりました。分かったから仕事しろ」
そう言って山田をキッチンの外へと追い出す。
ぶーぶー、と言っている山田は、注文を取って戻ってきた小鳥遊に見つかり、渋々仕事に戻った。
(……ふう)
山田の相手をすると疲れる。
が、今日の話は色々と興味をひかれるところがあった。
いつも幸せそうに笑っている轟のほうにばかり目が行っていて、相馬もいつも笑顔でいるなんてことは気付きもしなかった。
……いや、知っていたけれど、でもそのことで二人を「似ている」なんて思ったことがなかったのだ。
こいつら中身的には全然違うって言ったほうが正しいくらいだよな。
性格とか趣味とか……まるで違うだろ。
しかしそれよりも何か……根本的な点で何かが違うような気がする。
何だ?それは……。
そう思いながら俺は先ほどの二人の方を向いた。
……あ、分かった。
相馬は、たまに無理して笑っている。
いつでも素直に笑っている轟と並んで初めて分かったことだ。
笑顔の作り方が根本的に違う。
轟の笑顔は俺を安心させる効果があるのだが、相馬は……。
そう思いながら、また観察をしていると。
気付いてしまった。
……相馬、
「ずっと辛そうな顔、してるな」
貼り付けられた笑顔。
その陰に隠れている寂しげな瞳。
……何で、だ?
何で轟と話すとそんな笑い方をするんだ。
その疑問は、俺の心にもやもやとしたものを残した。
そうだ、お前もいつも笑ってる。
でもその表情は俺に不安を感じさせるんだ、相馬。
にている
(?全く違うじゃねーか)