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捨て犬捨て猫迷い猫

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 昔っから拾いものをしてばかりだ。トムは思う。
 記憶のある限りの一等最初は猫だった。幼稚園の時に雨に震えるぶち猫を拾ってきて母親に困った顔をされた。結局5年ほど飼ったが、ふらりと家出をされてそれっきりだ。次は犬だ。小学生の2年くらいの年だった。橋の下で震える子犬を抱えて帰ってきた。小さかった犬はそのうち大きく育ってトムと家族を驚かせたが、老衰するまでトムの家にいた。他にも小学生の頃にはカナリアも拾ったしトラ猫も拾った。カナリアは誰かのペットでそのうち飼い主の元に戻ったし、トラは知り合いに貰われていった。犬もまた拾った。小さな犬で、多分雑種だ。また大きく育つかと思っていたのに大きく育たない血が濃かったらしく、また大きくなるのではと身構えていた分拍子抜けした。拾ったのとはまた違うが、金魚すくいで取ったけれど飼っちゃだめってお母さんに言われた、と泣いてきた近所の女の子から金魚ももらった。三匹いて、最初は小さかったのに丸々太ってたっぷり5年は生きた。
 高校の時も、犬を拾って猫を拾ってウサギも拾って、あまりに短い周期でたくさん拾ってくるものだから流石に母親に怒鳴られた。その頃には、貰い手は自分で探して何とかするのが板に付いてきた。迷い猫や迷い犬も多く、飼い主を探したりもした。学生時代に拾った動物はちゃんと数えたら多分50匹以上入るんじゃないだろうか。
 そういや中学の時って拾わなかったなーとぷかぷか煙草をふかしながら思う。何かあったかなぁと一生懸命思い出していたら、あ、と閃いた。



 そういえばあの頃の静雄のは、今までにトムが拾った動物たちと同じ目をしていた。



 思い到ってから見回すと、自分に着いてくる金髪がひとつふたつみっつ。成人してからはめっきり捨て犬猫その他に会わなくなったと思ったが、こういうことだったかとため息をつく。いや、嫌なわけではないけれど。人間にまで有効だったとはと思うとどうしても。
 飼うには大きすぎる捨て犬捨て猫迷い猫が後ろからぴょこぴょこ着いてくる。
「なんつーか、犬猫っつーよりひよこだよなぁ」
「なにがっすか?」
「どうかしましたか?」
「どういった思考の末の発言なのか解説を所望します」
 一斉に反応したひよこの群れにトムは思わず噴き出した。
作品名:捨て犬捨て猫迷い猫 作家名:浅黄カスミ