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みそさざい
みそさざい
novelistID. 10303
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友情とはいかなる傍観か

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己の行動が時に不毛すぎて失笑の類も起きなくなることを、久々知は何やら存外に理解しているようだった。
かと言ってそれを正そうなどとは思っておらず、ただ目先の、眼前に在る少年にただ真っ直ぐに想いを伝えている日常茶飯事を、尾浜は溜め息と共に見守るのであった。
今日も今日とて。変わりなく。

「はーちざーえもーん!」
「へ、兵助っ!」
「はにかみ屋さんめ、逃げること無いだろう」
「はにかんでねえよ!」

久々知の、竹谷に対する行動の積極さは日々増していくばかりである。今や鉢屋の不破に対する積極性すらも可愛げがあるように見えてくる程で(実際あるかどうかは別問題だが)。こうなってしまうと竹谷も心休まる時が無いようで、私用で彼の部屋を訪れた時分に酷く驚かれたことを尾浜はあてどなく思い出していた。

「どこ行った?八左ヱ門やーい!」
「犬猫ではないんだから…」
「見失ってしまった…あの体躯で意外と素速いんだよな」
「お前から逃げてたら自ずと足も速くなるさ」
「逃げること無いだろう」
「…」

己の元に戻ってきた久々知が、先程竹谷に言ったことと同じ言葉を宣ったのを聞いて、尾浜は吐き出される溜め息を禁じ得なかった。不思議そうな表情で見返してくる久々知に更に溜め息が吐き出される。
尾浜は頬を指で軽く掻きながら辟易とした表情で久々知を見ると肩を叩いてその場を後にした。

「あ、おい。一緒に探してくれないのか?」

歩き出す尾浜の背中に久々知の声がかかる。それを聞いて相手から見えないのを良いことに尾浜はくつくつと喉で笑みを零す。姿が見えればあんなに押しが強いのに、この友人は一度見失うと不安を隠しきれないのだ。
そんな時はほんの少しの悪戯心と優しさでもって言葉をかけてやるべく、尾浜は振り返った。

「そんなに好きで不安なら一人で探せよ」
「薄情者め」
「普段押しまくっているんだからたまには引いてみろ」
「?」
「友人からの有り難い助言、為になるぞ」

果たしてその顔は酷く楽しそうであったことを、久々知しか知らないのである。