お前、今自分がどんな顔してるか知ってるか
太一はそれを無言で受け取った。表をざっとみて、裏返して、もう一回表を見て。開けることはなかった。太一は初めからこんなものに興味などないようで、彼の散らかったリビングにそれは紛れてしまった。
「あいつが来るか、俺が来るかで喧嘩になったんだぜ、」
凄いだろ、と言葉を続けようとして、止めた。太一の顔は怖いくらいに真剣だ。嘘などとっくに見抜かれている。
「ごめん、嘘だ」
「ああ」
どうかしていた。俺は太一から空を奪っておいて、それでいて結婚式の招待状をわざわざ持って来て、なんだ。おめでとうとかそんな安っぽい言葉を掛けさせて、太一を惨めにするために俺はここに来たのか? もう二度と彼にこんな思いをさせないために、俺は空ときっちり鞘に収まったんじゃなかったのか? 結局俺のしていることと言えば。
「俺達、結婚するんだ」
お前がこんな風に笑いかける日が来るなんて俺は寂しい。
作品名:お前、今自分がどんな顔してるか知ってるか 作家名:しょうこ