冬の日
「…サム…。」
言ったって気温が上がらないって知っているけど、
思わず声に出してしまう。
かじかむ手にそっと息を吹きかける。
手の先はほんのり紅くって、感覚がない。
彼にこんなところを見られたらまた、叱られてしまうかな。
いつも困らせてばかりいるような気がする。
わがままを言って、すねてみたり。
時にはあっと驚かせるようなことをして。
それは中学時代、ただの先輩後輩だったときから、
今の関係にいたるまでずっと。
大きくて、広い大地の様な背を少しだけ丸めて。
優しい弧を描く眉を、困ったように寄せて。
『こら、準太。』
大好きな声で囁くものだから、
それだけで自分は満足で。
でもそれだけをもっと聞きたくて。
わざとわがままを言っていた。
けれども、初めて遠く離れると決まった日、準太は決めた。
次に会うときは、もう少しだけ彼を困らせないような、
あとちょっとだけ大人な自分になろうと。
それでも、再会早々困った声を聞くことになりそうだ。
「だめだな、俺。」
それでも、呟く声に抑えられない喜びがにじんでしまう。
今日だけはいいかな。
早速自分を甘やかし、彼に甘えることを考えながら、
準太は、ポケットの合格証書を握った。
全然わからないので、説明(笑)
和さんはちょっと遠い大学に進んだんだけど、結構頭良くって
準さんはちょっと無理っぽかったんだけど、すごい頑張って
でもそれを一年間和さんに黙ってて、んで推薦の合格貰って
それ握りしめたまま和さんの下宿先で待ち伏せしてるって言う。
そんな話なんです。