二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

飛行機雲

INDEX|1ページ/1ページ|

 










「…お…おおおお。」

西浦高校野球部、副キャプテンにしてキャッチャーの阿部隆也は、
両手にアイスを持ってコンビニを出たところで、
奇妙な声を上げながら、今にも後ろに反り返りそうな相方を見つけた。

「……なに…やってんだ…?」

不機嫌そうに片眉だけを上げるが、これは彼の癖。
そして奇行奇声挙動不審は、彼の相方・三橋廉の専売特許だ。
時は真夏の炎天下。立っているだけで汗が滝のように吹き出るし、
せみは混声大合唱コンサートを開いているしで、
掻き消えるかと思った阿部の声は、ちゃんと三橋に届いたようだ。

「あ、阿部く…!」

阿部を呼ぶときに、「阿部君」でなく「阿部く」になるのも彼の癖。
いい加減にそれにも慣れたと言った感じで、阿部はアイスの袋を二つあける。

「何してたんだよ。こけるぞ。」
「う、ウン…ごめ…。」

意味もなくすぐ謝る。これも癖。

「…何してたんだよ。」
「あ…あ、あれ!」

そう言って三橋は天を勢いよく指した。



奇跡の九分割。繊細なコントロールを生み出す指が
真っ直ぐに指すのはまっさおで、吸い込まれそうな青空と、



一筋伸びる、飛行機雲。



「…おー…久しぶりに見たな。飛行機雲なんて。」
「お、おれ…も!」

懸命に言葉を紡いで、三橋は「ふひっ」と笑った。
その手に阿部は、パピコの半分を渡してやる。

「え、あう…?」
「やるよ。二つは食えねーし。」
「あ、あ、あ、ありがと…!!!」
「…だからいーって。」



せみの大合唱の中、三橋のうれしそうな声と
阿部の答える声が重なる。



それは青空に掻き消えることのない、飛行機雲のようだった。








作品名:飛行機雲 作家名:空太