ナイタアトニハニジガデル
雨上がりの空はいつも少しだけぼんやりしてて、
でも、それ以上に何かを洗い流してすっきりしてる。
そう、まるで、あれだ。小さいころに、
すごくすごくないて、泣いて。頭が痛くなって、
鼻水とか出て、泣いてる理由もわからなくなった後。
みたいなんだ。
「きれいな夕日だねぇ。」
水谷がゆるゆるした、彼独特の声で、今まさに
暮れて行く夕日を見つめて呟いた。
オレンジ色に色づいた空は
綺麗な奇麗なグラデーションを描いて、
今日一日を終わらせようとしている。
その声があまりにも穏やかで、
奇麗で、緩やかで。
俺は目を細めて、ただ水谷を見つめてた。
雨上がりの空はまるで水谷のようだ。
だから、俺は、
水谷を見ると泣きたくなるよ。
「ねぇー、栄口。」
水谷はなんでもないことのように、勤めて穏やかに、
それでもいつも見えない本気の輝きを目に宿して、
振り返って微笑んだ。
「10年後も、こんな夕日を一緒に見たいねぇ。」
ほら、また。
そんなことを不意に言うから。
君は青空で、俺は泣きたくなるんだ。
作品名:ナイタアトニハニジガデル 作家名:空太