二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ファーラウェイ

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「ま、また海外って……!そりゃ連絡も着かねぇよ!!どんだけ向こうに飛びゃあ気が済むんだっつーかもうそのまま帰ってくんな!向こうに永住しちまえバカ慶介!」

あーウルっっせぇ。
仮にも全貧連の盟友相手に失礼といえば失礼極まりない暴言を心中垂れ流しながら、法政大学、法崎政春は思わず視線を泳がせた。
向かって右手に早稲田大学、稲田早太。更に奥に明治大学、竹治明良。いつの間にか中央大学、谷中理央が居なくなっているあたり、彼はとことん空気を読むのがうまいというか
、逃げ足が速いというか、要領がいいというか!
天下の稲田早太がその赤毛を振り乱してご乱心なのは、彼の宿命のライバル、慶応大がう、福沢慶介が、単身ではなく優紀にリスト、そのあたりの要するに早太からしてみれば鼻について仕方のないというか、どうしてもそりが合わない連中と一斉に欧州から米国にかけての提携校視察に乗り出したからだった。

「ほら少し落ち着けって早太」
「放せ明良、俺なんか今日上から下まで合計でも3000円かかってねぇんだぞ!?それなのにあいつらはなんなんだこの不景気に!サーチャージ代どこから捻出してやがる、貧乏解放戦線だとか、貧乏くさくする会だとかバカにしやがって、もういっそ成田ごと封鎖してやろうか!?」

貧乏開放戦線が慶介、自校を貧乏くさくする会がリスト。どちらも全貧連の精神からはるか彼方。
両手をウインドミル投方も真っ青な勢いで振り回している早太を後ろから困り顔ではがいじめにしている明良の表情が、困ったような仮面の下で、そのくせ微妙な具合に緩んでいるのも政春は知っている。先ほどからどうしても早太への当たりが厳しくなってしまうのは、その辺りが原因だ。

「どう考えてもムリだろ、福沢じゃあるまいし」

生誕150周年だとかでネズミーランド海の借り切りを決行してしまった慶介は、なんだかもうレベルが違い過ぎて逆に面白いけれど。

「黙れ政春、この俺にやろうと思って出来ないことなんてない!」
「へーへー、だからリストに毎回毎回、ソータは人海戦術ばっかりだよね、なんて憎まれ口叩かれんだぞ」
「はぁ!?ふざけんなあのKY野郎、あいつんトコの1学年なんか俺んトコの2学部分にも満たねぇだろうが!!マジで踏みつぶしてやろうか!」
「だからやめとけってば早太、まーたこれだからマンモス校はとか、言われたくないだろ」
「う……」
「それに慶介と優紀とリストが頭から最後まで同じコース回るわけじゃないんだから、そんなに気にすんなって。……それともなに、浮気されんじゃないかって?」
「ばっ、ま、浮気!?明良お前頭おっかしいんじゃねーの!」

みるみるうちに顔を真っ赤にそめた早太は頭から湯気を立てた挙句、明良に空手チョップを入れて走り去っていく。その姿、はやての如し。
取り残された明良は茫然と早太に叩かれた側頭部を撫でさすっていて、あーぁ、バカなやつ、と政春はひとりごちた。
そりゃぁ好きな相手の悲しい顔よりゃ笑い顔の方がいいに決まってる、でもだからって、こんなやり方しかできないんじゃお前は一生苦しいままじゃねぇか。阿呆め。
……自分のことはとりあえず棚にあげておいて、だ。

「……海外、なぁ」
「あんま俺らにも縁ねぇよな、そりゃ交換留学制度なんかはそこそこ充実してっけど、つーか早太んトコの国際教養だってそっち系じゃねぇか」
「あー、うん」

おいこらテメェ。今お前の隣にいるのは誰だ、法崎政春さまじゃねぇか。
こっち向けよ、誰と話してんのかちゃんと考えろよ、俺を見ろよ!
あからさまに気のない返事に思わず胸倉掴んで揺すりあげそうになり、どうにかこうにか思いとどまる。そんな度胸があれば既にこの行き場なない三角関係もどきからは脱却できているはずなのだ。

「いつかみんなで海外行くかな。なぁ明良、お前海外っつったらドコ行きたい」
「俺?」

唐突な政春の問いかけに僅かに小首をかしげた明良は、そうだな、と言って、ボリビアなんかいいかな、と続けた。
ボリビアってのはどこだったろうか。頭のなかで地図を展開してみたけれど、咄嗟には思い浮かばなくてやめた。
本当はお前が行くんなら、アフリカだって、サバンナの奥地だって、火星にだってついていけるんだ!
喉元まで出かかった声は、けれどかたちになることなく消えていく。
作品名:ファーラウェイ 作家名:梵ジョー