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雨時々曇りのち、君の笑顔

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「今日も天気悪いなぁ…」

家の窓の外から見た空はどんよりと曇っていた。
昨日まではしとしとと雨が降り続いていた。
今日は雨は止んだけど、空は重い雲に覆われていてここ数日晴れた空を見ていない。
そうだ、あの時からずっと見ていないんだ。

「…なんで喧嘩なんかしたんだろ」

きっかけは本当に些細なことだった。
売り言葉に買い言葉の要領でお互い熱くなってしまった。
アルが熱くなるのはいつものことなのに、あの時はなぜか僕まで頭に血が上ってしまって折れることができなかった。
冷静になってしまえば、本当に後悔するばかりで。

空までもどんより暗くてまるで自分の心を表しているみたいだった。
僕らは確かに国だけど、僕らの精神状態が天気まで影響を及ぼすことなんてない。
そんなことは分かっているけど、あまりにも今の自分にぴったりな曇り空を見ると自分のせいじゃないかって思えてしまって申し訳ない気持ちになる。
せっかくこの時期はアネモネの花が咲いてとてもキレイなのに。
青空に白いアネモネの花が映えてとてもキレイなんだ。
今年もアルと一緒に行けたら良いなって思ってたのに、それも今の状態じゃ難しいや。

「はやく、仲直りしたいな…」
『それでは、今日の世界のお天気をお知らせします。…』
「え?」

いきなりテレビの音が聞こえ始めて思わず振り返る。
クマ五郎さんがテレビをつけたみたいだった。
テレビでは、世界の天気を放送していて、自然とカナダを見てしまう。
もちろん、今日も曇りマーク。
ふと、アメリカに視線をずらすと、そこにも曇りのマークがあった。
僕と同じ曇りマーク。
僕らは確かに国だけど、僕らの精神状態が天気まで影響を及ぼすことなんてない。
でも…。

「……謝りに行こうかな、クマ太郎さん」
「ダレ」
「カナダだよ」
「オマエノ好キニスレバイイ」
「うん、ありがとう」

クマ三郎さんの頭を撫でて、その柔らかい感触に頬が緩むのを感じる。
そういえば久しぶりに笑ったのかも。
上着を掴んで、玄関へ向かう。
アルに会いに行く、そう決めてから心が弾んで自然に笑顔になれる。
早く会いたい。


ピンポーン、


「もう!出かけるって時になんで」


ピンポンぴんぽんピンポン!


(でも、あれ?このインターフォンの連打の仕方って…もしかして)

上着を掴んだまま慌てて玄関の扉を開ける。
目の前に立っていたのは、僕が今会いに行こうとした会いたかったアルフレッド。
居心地悪そうに立ってる姿はいつもの自信ありげな姿じゃなくてなんだか少し可愛かった。

「やぁ、マシュー…なんだい、今から出かけるのかい?」
「…あ、うん、でも、もう良いんだ。僕も今君に会いに行こうと思っていたから」
「なんだい、俺に用事だなんて珍しいじゃないか。ああ、でも、俺も君に言いたい事があったからちょうど良かった」

玄関の中と外。
扉は開いているというのに、なんだかその境目が深い溝のように感じて苦しくなる。
アルの肩越しに見える空はまだ雲が覆ってる。
握っていた上着をさらに強く握り締めてアルとしっかりと視線を合わせる。

「アル、その…」
「マシュー、…」


『ごめん!』


「え…!?なんで」
「は…!?だって、君の国が曇りマークだったから」

僕の目の前にいるのは、ぽかんとした表情のアル。
きっと僕も同じような顔をしてるんだろうな。
思わず見つめ合って、アルの言葉を聞いて同じタイミングで噴出した。
お互い腹を抱えて笑う。

「ぷ、あははは!はぁ…笑いすぎて腹痛いんだぞ、もう」
「あははは!ホントだよ。まさか君も同じこと考えているなんて思わなかった。」
「俺たちは兄弟だから、ね。当たり前なんだぞ。はぁ…笑いすぎてのど渇いた。マシューの淹れたメープルティー飲ませてくれよ」
「もちろんだよ、ブラザー。今日は特別に良いメイプルを出そうか」
「なんだい、太っ腹じゃないかい?マシュー」

笑顔でアルを迎え入れる。
扉を閉める時に見上げた空は、今までの曇り空なんか嘘だったみたいに青空。
僕の隣のアルも笑顔。
だから、僕も笑顔。
やっぱり君の笑顔はヒーローだね、アルフレッド。


『それでは、今日の世界のお天気をお知らせします。
アメリカ、カナダ共に快晴です。今日は過ごしやすい一日になるでしょう』


END