氷
「…なんだよ」
煮え切った俺が振り向いて問うとあいつはぱ、と顔を背けて別に、と素っ気なく呟いた。
心なしか顔が赤い気がするのは気の所為だろうか…。
「おい、ガゼル、」
何処かに行こうとするガゼルの肩を掴む。
すると
「っ、」
ガゼルが息をのんだ。
不思議に思って顔を覗き込むと耳まで真っ赤にしたガゼルが「は、はなせ、」
いつもは飄々としているガゼルが。
クールで、人を子馬鹿にした様な態度のガゼルが。
目を潤ませながら
頬を染めながら
俺の名前を呼んでいる。
「ば、ばーん!おい、聞いているのか…!?」
ちゅ、と小さく音を立ててガゼルの唇に自分のそれを重ねる。
「ぷ、ひでぇ顔だな」
俺が笑うと漸く我にかえったガゼルが今度は怒りで顔を真っ赤にして俺に掴みかかってきた。