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蝉時雨

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ジリジリと焼けるような暑い日が続く。
どんな天気であれ、決められた制服を着るように義務付けられている隊員たちの額からは止めどなく汗がこぼれた。

「暑い~」

啓介はうちわで仰ぎながら、木陰で足を休めていた。

「暑いならその白衣、脱げよ・・・」

同じく啓介の隣に腰を下ろした隼人は、彼を一瞥すると懐から煙草とマッチを取り出す。

「この暑い中、よく煙草吸う気になるよね~」

啓介は深く隈の描かれた右目を細め、ため息交じりに言う。

「そうか?暑さと煙草は関係ないと思う」

「俺的に暑いからやめてほしいんだけど」

そうこう言っている内に、煙草から紫煙が上がった。火のついたマッチは手首を素早く振ることで消され、地面の土に押しつけられた。

「それにそのツナギ、暑くるしい」

隼人は何も返さずに無言で滴る汗を拭った。


視界には入らないが、どこからか千晴の声がする。ヘルメットを被っている分余計と暑そうに見えるのに、あの小さな体のお陰で力が有り余っているのか、「セミを採りに行ってくる!」と一人駆けて行ってしまった。そのあとを仕方なしにと歩いて追って行った義輝は、やはり陸軍の母と言っても良いかもしれない。

「チハたんちっさいのに、網も無しにセミなんて捕まえられるのかな~」

啓介はクスクスと笑った。
この暑さ太陽の日差しのせいだけではない。木々にとまるセミがジリジリと鳴くことで、余計と暑さを醸し出しているような気がした。

「セミってさ~、すぐ死んじゃうよね」

隼人の顔を覗き込むように啓介は上体を乗り出し、怪しく微笑んだ。

「俺も昔、網で捕まえたことあるけどさ、虫籠に入れといても次の日には死んでるんだよね~」

「・・・」

「一週間しか生きれないんだって。その間子孫を残すためだけに必死に鳴くんだよ。ちっぽけだよね~、そんな命、なんのために生まれてくるんだろうね」

セミの鳴き声が一層大きくなった気がした。
隼人は短くなりかけた煙草を咥えたまま、にたりと笑う啓介をただじっと見つめた。

「どうせすぐ、死んじゃうのにさ」

啓介はうちわを投げ捨てると隼人の煙草を奪い去り、見せつけるように一口吸った。血色の悪い唇のわずかな隙間から煙が吐き出され、ゆるゆると暑い空に消えた。
隼人は静かに啓介の顎をすくうと、静かに怪しく弧を描いたままのそれに口づけた。触れるだけの口づけ。
しかしそっと唇を離すと、鼻の先が触れ合う距離で見つめあったまま隼人は口を開いた。

「弱いから、必死に生きるのさ」


啓介の唇が、一層弧を深くした。
作品名:蝉時雨 作家名:Rocco