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だいすき

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財前光は意外と可愛い奴だと思う。

皆の前では余り感情を露骨に表現する事はないし、どちらかというと無口なタイプだ。過剰なスキンシップを嫌がり、どこか冷めたような瞳と口を開けば飛び出す毒舌のせいで、あまり友達は多くないらしい。
"らしい"と表現したのは、俺と二人きりになったときはそういう態度を一切見せないからだ。
確かに口数は少ないけれども、ちゃんと聞けば答えてくれるし、起伏が少ないだけで感情表現が乏しいわけでもない。俺が好きやって言えば顔を真っ赤にして 笑ってくれる。俺がソファーに座って一人でテレビを見ていれば、必ず横に座ってきて俺の肩に頭を預けて眠るのが光の癖だ。あと意外にも可愛いものが好きら しい。表面上の性格が災いして所持してこそいないが、リラックマには何か通ずるものがあるとこの前言っていた。ダラダラしたいだけじゃないかとは思うけ ど。

と、ここまで言ったら目の前で興味無さそうにしていたはずの謙也と白石の目が大きく見開かれていた。

「ちょ、待てユウジ…いま誰の話してたんやったっけ」
「光やけど」
「光って…あの財前光?」
「おう。それ以外にどの光がおんねん」

あの冷静沈着さで有名な白石も、何かに動揺を隠せないのかずっとエクスタシーエクスタシー呟いている。
正直言って気持ち悪いのに、謙也はそれに構わずキョロキョロと落ち着かない様子で辺りを窺っていた。

「俺、アイツからまともなメールの返信きたことないんやけど。平たく言うと4文字以上のメールを貰った事ない」
「お前いまどきポケベルか何か使うとるん?」
「んなわけあるか!」

謙也はそう叫んで、ほら見てみい!と取り出したケータイ電話の画面を俺の前に差し出した。
どうやら部活の練習時間開始変更を知らせるメールを謙也は送ったらしく、件名は「Re: 時間変更やで^▼^b」になっている。
そして下の本文部分には『はい』という2文字だけが寂しく煌々と光を放っていた。

「…こ、れは…」
「さすがに俺もこれは受けとったことないで」
「何やて…!?」
「俺の場合は『分かりました』や」
「ほぼ同じやんけ!」
「4文字多いし、漢字変換あるやろ!」

いきなりギャーギャーと喧嘩を始めた白石と謙也を横目に見ながら、俺もポケットからケータイをふと取り出し何気なく開いてみた。
何時の間にか来たのか新着メールのアラートが入っている。
ああ、確か前の時間は静かにしなければいけない授業だったからサイレントモードにしていたんだっけ…
そうぼんやり考えながらメールを開くと、そこには1時間程度しか目を離していないはずなのに5通が未読で残っていた。

「…全部光や…えーっと、とりあえず最新のヤツから…」

ほんの3分前に受信したらしいメールを開くと、「会いたい」というメッセージが目に飛び込んできた。
たった4文字の、短い言葉。

俺はケータイをパタンと閉じて、いつもの場所に向かうべく席から立ち上がった。
言い合い途中の白石と謙也の諍いも一時的に収まり、二人の視線が俺に集まる。

「訂正。俺も4文字だけのメール、光から受けとった事あるわ」
「せやろ!!ほら!」
「何や、ユウジ俺より下やなあ…」
「でも残念。愛情だけはお前らの108倍詰まっとるから」

そう言って教室を飛び出すと、後ろの方から謙也の叫ぶ声と白石のお決まりの声が聞こえてきたけれど、俺は気にする事なく、屋上へと続く階段へと足早に歩を進める。
タイトルもない4文字のメールに、走りながら俺もたった4文字の「もう着く」メールを送ると、屋上の扉が見えてきた。

そして扉を開けた瞬間、ふんわりと包まれた暖かさに、4文字の言葉を返すのだろう。

だいすき、と。
作品名:だいすき 作家名:みやこ